通訳ヌナと…【Jungkook：4】

傘 -Jungkook- ページ5

３月になった。

韓国に帰ってきてからはコンサートはないものの、
来月のカムバックに向けてレコーディングがあったり、新しい振り付け練習があったりと、
変わらず忙しい日を送っている。

合間にはトレーニングをしたり、
ゲームをしたり、
またトレーニングをしたり。

事務所が食事に連れて行ってくれたり、
友達と飲みに行ったりもしたけど…

最近食欲がなくて、
だからこそ、
アルコールがより進んで。

忙しくしてたり、
何も考えられないほど打ち込んだり、
現実逃避したり、
アルコールの力を借りたり。

自分の中の芯みたいなものがなくなって、
それらの力がないと立ってられないほど…

今はぐにゃぐにゃな僕。

立つ意味とか。
進む意味とか。
やる意味とか。

考えたら…
ううん。
考えるのが怖いから、
考えないようそれらの力に頼った。


ほらね。

今の僕の意思なんか関係なく、
日々ことは進む。

今までがそうであったように。

決まったスケジュール。
決まった時間。

たまに疲れたからって立ち止まっても、
誰かがすぐに僕の背中を押しに来る。

そしてみんなに送れないよう、
歩かされる。

僕のことなんかお構いなしに、
世界は変わらず進んで行く。





「うわっ。今日、寒い」
「夜から雪降るって言ってたけど」
「マジで？もう３月なのに？」

宿舎から用意された車に乗り込んで、
今日も新しい振り付けの練習をしに事務所へ。

窓の外から見る外はたしかに寒そうで、
数日前は暖かくてダウンなんて必要なかったのに、
今日は多くの人がダウンを着ていた。

黒いダウン。

見上げる空は灰色で。

あぁ…この空の色。
なんか僕の心の色みたいだな…
なんて思いながら見ていたら…

「げっ。雪降ってきた」
「本当？わ！本当だ！」

そんな灰色の空から、
白い雪が降ってきた。

途端、さっきまで黒かった街の姿が、
一瞬で花畑みたいな世界に変わった。

赤、青、ピンク、緑、黒。
ストライプやチェック、花柄。

様々なカラフルな傘の色。


事故なのか工事なのか。
なんなのかわからないけど交通規制がかかり、
走って間も無く止まってしまった車。

停まってくれて良かった…なんて、
そんなことを思いながら
カラフルな傘をずっと見ていた。


「ちょっ、グク！こんな所で窓なんか開けるな！」

「手だけです」


雪だけど。

雨じゃないけど。

どうしても、
手を伸ばさずにはいれなくなって。



と、その時。

目に止まったコーラル色のキレイな傘。

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