通訳ヌナと…【Jungkook：4】

部屋 -Jungkook- ページ40

電話を切るも、
数十秒…頭が真っ白で動けなかった。

声が聞こえた瞬間は死ぬほど緊張してたけど、
カトクより声が聞ける電話、
電話よりも直接会うこと、
目の前で話すこと。

３月のあの時のことを思い出し、
緊張なんかよりも会いたい気持ちが一瞬で勝った。

でもそんな僕とは反対に、
ヌナは僕の一言一言に驚いて。

驚いてること、
“うん”と言ってくれないこと、
やっぱり怖さを思い出し、

「嫌ですか？」

と、聞いてしまった。

自分でもよくそんなことを言ったと思った。

そんな直接的な聞き方、
ヌナはなんて答えるのか…

聞いたものの、
黙ってしまったヌナの様子が気になって仕方なくて。

「あ、その…今のはなんて言うか…」

会いたい、会いたいと、
ヌナの気持ちは考えず、
困らせて嫌われたら…って思ったら…

「嫌じゃないです」

…と。

囁くような小さなヌナの声が聞こえた。


聞くとヌナは1人部屋らしく、
僕が行ってもいいし、
ヌナに来てもらってもいいし、
ヌナがいい方で…と提案するも、
どうも僕の部屋に来るのは不安な様子で、
僕がヌナの部屋に行くことになった。

他のスタッフもいる階らしく、
バレることをすごく心配してたけど。

だから無理はしないで、って言われたけど。

部屋に行ってもいいって言われたのに、
無理しないなんてありえない。

スタッフが仮に廊下にいたとしても、
どんな手を使ってでも絶対に会いに行く。


そう意気込んだものの、
電話を切った瞬間、少し放心状態に。

シャワー…なんて浴びてる時間はないし、
とりあえずTシャツだけは着替えて、
髪を整え、
シャツを羽織り、マスクをし、
スマホだけを持って教えてもらった階に向かった。

一応ドキドキしながら降りたエレベーター。
見たところ人はいなく、
急いでヌナに電話をかけたながら部屋に向かった。

「もしもし？」

「僕。7階着いて、今部屋に、あ！あった！」

小声で話しながら、
周囲を伺いながら部屋に向かうと、
ヌナの部屋のドアが少し開いたのがわかって。

自然と速くなる足。
開いたドアの隙間に手を入れて、
滑り込むように部屋の中に入った。



「大丈夫…だった？」

背中で聞こえたドアが閉まる音。
荒れた自分の呼吸音。

そして。

すぐ目の前にいる、
会いたかったヌナ。

何度も何度も見たけど。
近くにもいたけど。

こうやって2人で会うのは、話すのは、
３月のあの時以来で…



「撤回していいですか？」

「え？」

「ヌナに触れたいです」

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