通訳ヌナと… 【Yoongi：3】

涙 -You- ページ12

やばい…
どうしよう…

みんながいる方に背を向け、
一生懸命 目を大きく開けたり、
指で目頭を押さえたり、
自然を装ってなんとか…
この涙を抑えようとしたけど…


ダメだ。
この部屋から出ることが一番の解決法だけど、
こんな目じゃ、きっとバレてしまう。


ユンギさんの…顔が見れなかった。

怒るというか…
またあの顔をされたら…とか、
何より
合わせてくれない目を見るのが怖かったから。

そう思って、
鞄から取り出しておいたメモとペン。

書くフリをして、
メモを見つめた。

私よりも背が高いユンギさん。
顔は見れないけど、
少しでも見ている風を装うため、
少し視線を上げ、首や肩を見た。

でもその首や肩が動くたび、
それだけでドキドキしてしまう私。


好きな人を…忘れるには
どうしたらいいんだろう…？


そして、彼女が急にこそっと…
耳元で、手紙にIDを書いたので、
よかったら連絡が欲しい………と、
言ってきた。


一瞬、声が出なかった。


控え室でこうやって、
海外の方の通訳をするのは初めてじゃない。

けど、芸能界の方とはいえ、
ファンだという女の子の通訳は初めてで…

連絡が欲しい…と。
そういうことを通訳するのも初めてで。

かといって、
通訳しないわけにはいかず、
私はただの通訳だから、
内容を勝手に変えるわけにもいかず…



最後に、
ユンギさんに自らの言葉で挨拶をした彼女。


一歩後ろに下がった私。
じっと見たわけじゃないけど、

パッと…

なんていうんだろ…

その雰囲気が…

芸能人同士だから出る空気だったというか、
二人の間に私みたいな一般人が絶対に出せない何かを感じて…


ユンギさんに挨拶をして、
軽く頭を下げて…

その瞬間から、
堪えていた涙が出そうになって。

鞄にメモやペンを入れようと、
下を向いた瞬間、ぽとっ…と…


こんな所で泣くなんて、
しかもこの涙は仕事の涙じゃなく私情でなんて、
社会人として、私は失格だ。



そう思っていたら、

「ヌナ！」

と、突然近くから呼ばれ、
反射的にそっちを見てしまった。

いたのはジョングクくんで、
顔を見た瞬間、
やばい！と思ったけど…


「僕がこっちに立って隠すんで、その間にササッと…涙拭いちゃって下さい」


え？

…と、思うも、
ジョングクくんがみんなから私を隠すように立ってくれ…

手に持っていたハンカチ。
急いで目を押さえた。

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