通訳ヌナと… 【Yoongi】

廊下 -You- ページ41

韓国と日本に時差はない。
とはいえ、
パリから戻った翌日の日本出張は正直キツかった。

だけどユンギさん達だって、
休む間もなく午後からは授賞式に参加され、
翌日からも日本ツアーや12月にある音楽祭に向けて練習があると知り…

ニュースで見た授賞式や、
欧米ツアーでの動画や写真。

見ると頑張ろうって思えたし、
エネルギーみたいなものが湧いてきた。

だから今日まで休みだったけど、
明日からの為にも、やれることは今日しておこうと思い事務所に来ていた。

日曜日だったから事務室の中は数人しかいなく、
私が帰る時には誰もいなくなってた。

事務室の電気を消すと真っ暗で、
何時だろうと腕時計を見て…

クスッと…

思い出し笑いをしてしまった。


腕時計を見て、
鞄の中からスマホを取り出し、
ちゃんと時刻を確認して。


うん、大丈夫。


今日は時計は止まってない。


時間を忘れ仕事をし、
壊れた腕時計の時刻を疑うことなく信じ、
あの日…

こうやって廊下を歩いてたらユンギさんに会ったんだよね。


…と。


一人思い出しながら廊下を歩いていると、
手に持ったままのスマホが鳴った。

画面を見て…

見間違いかと、
つい近づけて見てしまった。

今さっきまでユンギさんのことを考えていたから、
誰か違う人の名前まで見間違えたのかと思って。


驚きと嬉しさ。

ユンギさんからの電話は二回目で、
パリの時と同じように、緊張しながら電話に出ると…

「もしもし」

「……」

あれ？
何も聞こえない。

もしかして…
ただ間違えただけとか？

「あれ？もしもし？ユンギさん？」

そう口にして、
もしまた何も聞こえなかったら…

と、思っていたら、

「あ……ごめん…俺」

と、声が聞こえて。


嬉しくて、驚く声が漏れないよう、
スマホを持っていない方の手で口を咄嗟に押さえた。

いつの間にか止まっていた足。

ユンギさんと話しながら斜め前に見えたのが、
ユンギさんの作業室だという部屋のドアで。

「いえ。今 事務所で、ちょうど今…ユンギさんの作業室の近くを通ってるんですが…何かお仕事のことですか？………わっ！！」

ゆっくりとドアを見ながら歩き出したら、
突然！！！ドアがバッ開き…


「顔……驚きすぎたろ」


今はマスクもしてなくて、
ユンギさんの笑った目も、口も、
全てハッキリと見えて。


ユンギさんが今どこにいるかなんて…
考えてもなかった。

作業室にいるなんて、
少しも思ってなかった。

想像さえできなかったのに…

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