通訳ヌナと… 【Yoongi】

電話 -Yoongi- ページ40

じゃあ、誰かに聞けないのなら、
本人に聞けばいいんじゃないか。

電話もしたことがあるし、
メールだって、内容は仕事のことだけど、
したことはあるし。

だけど、できなかった。

１日１日、時間が経つにつれ、
夢だったんじゃないかっていう気持ちが強くなり…

独りよがりのようで、
恥ずかしくて…バカみたいで…

けど…

今日までは休みだとマネージャーは言っていたけど、明日から事務所に来るとは言ってなかった。

しかも事務所に来たからといって、
会えるとは限らない。

もうすぐ日本ツアーが始まるから、
打合せの時に会えるだろうけど、
それがいつかはわからない。

そう思うと、無性に会いたくなって。

さっき、
理由もないのに尋ねられないって言ったけど、
理由はある。

ただその理由を、他の人に言えないってだけ。

ただ…会いたい。
一目見たい。
遠くからでもいいから、声が聞きたい。
目なんて合わなくていいから、
Aの笑ってる笑顔が見たい。

それが理由。
ただそれだけ。


スマホを手に取り、
カメラロールのアプリを開いた。

何度かスクロールし、
ある一枚で手を止めた。

パリ公演最終日。
スタッフも含め、みんなで撮った写真。

隣でもないし、近くでもない。

けど、唯一俺が持っているAが写る写真。

俺に向けて笑ってくれてるわけじゃないのに…

けど、画面の中の笑顔のAを見ると、
やっぱり…つられて俺も笑ってしまう。


目を閉じて……


深く息を吐き出した。


そして。


目を開けると同時、
息を吸いながらAに電話を掛けた。


バカだろうと、
愚かだろうと、
恥ずかしかろうと、



「もしもし」

「……」

「あれ？もしもし？ユンギさん？」



会いたくて、
声が聞きたくて、
たまらないのは俺なんだから。

「あ……ごめん…俺」

聞こえてきたAの声。
マカロンを渡した時と同じ…いや、それ以上。
聞こえた瞬間、全てが耳に集中し、
細胞がざわざわと一気に騒ぎ出す感じ。

「こんばんは。どうしたんですか？」

「あ…いや…その…ごめん、休みなのに」

「いえ。今 事務所で、ちょうど今…ユンギさんの作業室の近くを」



……っ！！





「わっ！！」




こんなに俊敏に俺も動けるのかってくらいの速さでドアに向かい、
バッとドアを開けると、
スマホを耳に当て、驚いた顔のAが目の前にいて…



笑顔じゃなく、
どんな表情であっても。

Aを見れば俺は笑顔になれるのだと…
初めて知った。

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