JIYONG -2-

無理矢理 -Jiyong- ページ34

シーツに広がる髪の毛。
涙で潤んだ目。

抵抗して暴れたからだってわかっているけど、
荒い息遣いの音。

上下する胸。


いつもこうやって女を上から見下ろすと、
女の顔にAが重なった。

いや…重ねた…のか？

それで興奮して、女を抱いていたんだけど、
今、俺のベットにいるのはA。
俺の下にいるのもA。

熱さと苦しさ。

ギリギリ…
まだ頭の片隅でブレーキをかける俺がいて、
本当に今の今まで必死になってブレーキをかけてきたけど。

もう無理だった。
自分で自分を抑えられなかった。

相手の気持ちとか、
事の善悪。

そういった全てのことが考えられなくなった。

ただ…Aが欲しくて。



手首を掴んでいた手を離し、
頬に触れ、目尻に伝う涙を拭った。


ごめん…


心の中でそう呟いて、
無理矢理 キスをした。

嫌がるA。
頬に触れていた手でしっかりと顔を抑え、
何度も何度も唇を味わった。

触れたが最後。
もっと、もっと…と欲は大きくなるばかり。
やめることなんかできない。

足を動かしたり、
自由になった手で俺の腕を掴んだり、叩くんだけど…

チュッと音を鳴らし、
一旦離した唇。

Aの顔を見つめれば、
これまで見たことがないほどの涙を目から流し、
俺を見ていた。


もっと…敵意に満ちた目で、
最低な奴を見るような目で見ればいいじゃん。

何でそんな悲しそうな目で俺を見るの？

足で思いっきり蹴ったり、
手で殴ればいいじゃん。

なのに何でそれをしない？

唇だって噛めばいいじゃん。
何でしないの？


わかってる。
Aにそれができないってことは。

いつだって、
今まで一度だって俺を拒否したり否定したことはないから。

優しく、
俺を傷つけることはしないよう、
いつだって優しく…俺を受け入れてくれたから。


そんなAの優しさを、
今 利用しようとしている俺は…
最低なんて言葉じゃ足りないほど、
最低な奴。

「嫌ならもっと嫌がればいいじゃん。ほら…そんなに優しく掴むんじゃなく、手で俺の頭や顔とか殴ればいいじゃん」

「もうやめて…っ」

「Aが欲しい」

「やだ…っ！さっき他の女の人と…っんん！」

他の女のことを言う口を塞いだ。
Aの口から他の女のことは聞きたくない。

ねじ込んだ舌。
Aの中の温かさに溶けてしまいそう。

舌を動かして、追いかけて、
また一旦離れた時だった。


パンッ！という音が響いたと同時に、
左頬に痛みを感じた。

嘘 -Jiyong-→←欲 -Jiyong-

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