JIYONG -2-

MV -You- ページ7

「Aヌナ、全然違いますね。まさにCRAZYモード全開って感じ」

「そう…かな？」

「あ。ジヨンヒョンとのMV見ました。すごく良かったです。ヒョンとヌナの空気感っていうか…それがすごく良くて、だから今回、俺がヌナとペアにして欲しいって頼んだんです」

「そうなの？」

どういう理由で各々組み合わせたのか疑問だったから、ちょっとスッキリした。

「キスシーン、初めてなんで、よろしくお願いします」

私より年下で、私より背が高くて。
そんな男の子に笑顔で頭を下げられ、
可笑しくって吹き出してしまった。
と、同時に、ちょっと吹っ切れたような感覚になった。


いくつかの場所で、何カットもの撮影をし、
最後の撮影になった。

最後の撮影はクラブの個室で酔っ払った男女が盛り上がり、王様ゲームをするというもの。

私は男の子の隣にいて、肩に手を回されたり、
膝枕をしたり、最後…
キスのフリをする…というもの。

用意されてる飲み物は、もちろんノンアルコールのもの。だから酔うはずはないんだけど…

なんだろう…空気に飲まれた感じ。

新曲のコンセプト…
寂しくて、誰かにそばにいて欲しくて、
1人は嫌だから華やかな世界に身を置くけど、
どんなに騒いでも、どんなに笑っても、
心の奥は孤独なまま。

撮影しながら流れるその曲。
彼らの声や、メロディーや、その歌詞に共感し、
入り込んでしまった。

この数ヶ月。
楽しくて、幸せで、夢のようで。

けど、本当は…
本当のことや気持ちを隠し、
誰にも言えず、未来もなく、何も望めず、
必ず来る終わりを思うと、心の奥は不安で、
苦しくてたまらなかった。

だけど、どんな形でもいいからそばにいたかった。
だから私には、ジヨンさんを受け止め、笑顔でそばにいることしかできなかった。


けど、もうお終い。


スペードの８と、ハートの８。
数字が合ったトランプ。

トランプで口元を隠した男の子が近づいてきて。
近づいた男の子の頬に触れた時、
ジヨンさんとは違う輪郭や感触に身体が反応した。
キスのフリが終わり、抱き合うと…

目に浮かぶ。
ジヨンさんの匂いや身体のライン。

仕事中なのに頭の中はジヨンさんでいっぱいで、
どうやって忘れたらいいんだろう？

その後 -Jiyong-→←代役 -You-

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