JIYONG -2-

壊したい -Jiyong- ページ31

「こんばんは」

軽く頭を下げ、挨拶をするA。

余所余所しい態度と言葉に、
また苛立ち始める俺。

「こんばんは」

サラッと言ってAの横を通り過ぎ、
部屋のドアのロックを解除しようとしたら、

「あの…これ。ありがとうございました。長く借りてしまって、本当すみません」

チラッと後ろを向くと、両手で紙袋を持ち、
それを俺の方に差し出すA。

「中…入って」

「いえ…ここで…」

ここで？
これでもう終わりにしようとしてるわけ？

静かな空間に響く解除音。
ドアを開けると、紙袋を持つAの腕を引っ張った。

「やっ…！ジヨンさん！」

玄関に入った瞬間、中にAを押し込み、
ドアを背に立った。


不安がるような…
怯えてるような…
困惑しているような…
そんなAの表情を見ると、
何か…もう…抑えがきかなくなった。


「あの男だれ？」

「え？」

「車に乗せてもらってたじゃん、家まで。こうやって…」

「…っ！」

「頭も撫でてもらってたじゃん」

あの男がしたように手を伸ばし、
Aの頭に触れた。

でも怖がるようにビクッと震え、
今にも泣きそうな表情で。

なんで？
なんで俺には、あいつにしたように、
笑顔で微笑んでくれないの？

「あの…人は…」

「男できたんだ？」

「違っ」

「今日も会ってたんだろ？会いに行くって、あの時言ってたじゃん？」

「ジヨンさんっ！痛い…です」

気づいたらAの手首を掴み、
貼り付けるように壁に押し付けていた。

ドサッと音がして、Aの右手から紙袋が落ちた。

でもそんなのどうでもいい。

力も緩めず、目を合わせてくれないAをずっと見ていた。

「男ができたから俺に連絡しない。会わずに郵便受けに返す。だろ？」

「違う」

グッと顔を近づけるも、
目は合わさないまま首を横に振るA。


頭の片隅で、もう終わりだ…と冷静な自分がいた。
こんなことをして、ここまでして、
もう本当に終わりだ。

だけどもう、自分でも止められない。
止め方も知らない。
だってこんな自分は初めてだから。


めちゃくちゃにしたい。
めちゃくちゃに…壊したい。


「あ…そうだ。MVも見たよ。随分と楽しそうだったね。あんなシーンあるなんて、言ってくれたらよかったのに。あれはフリ？それとも…した？」

「……」

何も言わず、下を向いたままのAが首を横に振った時、ぽとりと下に涙の粒が落ちた。

「ね…俺ともしよっか？」

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