JIYONG -2-

最低 -Jiyong- ページ29

「激しっ…、ね、もっと…ゆっくり…」

シーツを握りしめ、髪を乱しながら喘ぐ女。

心の中はこんなに冷めてるのに、
反応だけはする自分の身体が情けない。

もう何日こんな夜を続けてるのか。
夜が嫌で、孤独を感じるし、
何より空が暗くなれば、あの日のことを思い出す。

「次 後ろ向いて」

終わりが近づいて、女を起こし、
後ろから攻めた。

これでいい。

どうしたって、
頭の中からAの顔が消えないんだから。

Aもあの男と同じようなことをしてるのか。

名前を呼んでくれたあの声で、あの男の名前を口にし、この女のように俺が聞いたこともない声を口にするのか。

孤独が嫌だから誰かと居ずにはいられないのに。
抱えた気持ち悪さを吐き出したくて女といるのに。
Aを俺の中から追い出したくて女といるのに。

何で消えてくれないんだよ。


「ジヨンっ…あたし…もう…っ！」

名前を呼ぶな。
邪魔するな。

目を閉じれば、目の前にはAがいて、
あの声で名前を呼んでくれて。

あの夜から何人違う女を抱いただろ。
何人抱いても、どう抱いても、
頭の中では…俺は…
毎回毎回、いつだって…Aを抱いていた。


今もそう。


吐き出した欲。


ゆっくりと目を開けると、
目の前にいるのは違う女。

Aじゃない。

本当に最低な男だと認める。

身体を離し、すぐに服に着替える。
１秒だって、もうここにはいたくない。

着替えてる後ろから、
何やらペラペラとうるさい女。

あー…疲れる。

何で人の話を聞かなきゃならないの？
聞いてどうなんの？
どうでもいい。
全く興味ないんだけど。

逆にいろいろと聞かれても、
何で俺のこといちいち話さなきゃいけないの？
あんたは俺のなんなの？

やっぱり、Aじゃなきゃダメなんだよ。

ホテルから出て見上げた空。
真っ黒。
あの日と同じ。
俺の嫌いな空の色。

そういえば…今日は土曜日。

『次は土曜日に会いに行くね！』

Aの言葉が頭に浮かんだ。

今…あいつといるんだろな…

そう思うと急にむしゃくしゃして、
何もかもぶち壊したくなった。




「…もしもし？」



Aに電話をかけた。
勢いでかけたものの、すぐに出てくれ、
耳からあの声が聞こえた瞬間、
一瞬ふわっと元の…あの頃の俺に戻った気がした。


「貸した詩集なんだけど…今すぐ返してくれない？」


驚くA。

あの男といるの？

一瞬でもあの男から引き離せるのなら、
今ならどんな最低な言葉でも口にできるよ。

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