恋人までのキョリ (ページ16)

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「おまえ、いつもがんばってるもんな。

がんばりすぎてるんじゃない？」

「まだまだです。」

「俺が新人の頃よりかなり優秀。すごいよ。」

「どうしたんですか？横尾さん。
今日、優しいですね。」

「今、仕事じゃないからな。
おまえが元気ないからすげー心配してる。

こっちに友達いるのか？ひとり暮らし慣れた？」

「私、4人兄弟で賑やかだったからひとりは静かです。

友達はみんな関西で就職したから、こっち来てからはしめちゃんとシズヤと事務の綾香ちゃんです。」

「そっか。ちょっとさみしいな。」

「…。」

「ごめん。そんなに泣くなよ。

ちゃんと送ってきてくれたの食べないと。
食品会社で働いてるんだから。

キッチンのいすに座ってて。
ひとりで泣いてたら心配だから。」

横尾さんが私の手を引っぱって立ち上がらせてくれて、キッチンの椅子に座る。

ニャン吉が寝てるのに動いたからいやそうな顔をしてる。

横尾さんが一番上のお兄ちゃんに見えてきた。

いや、ごはん作ってくれてるからお母さんか。

30分もすると冷蔵庫に眠っていた食材たちが立派な和定食に姿を変えて食卓に並ぶ。

おいしそう…。いいにおい。
「おまえんちにあったものだけでこれだけできたんだぞ。

お母さんに感謝しろよ。」

「はい。」

「いただきます。おまえは食べて寝る。

ニャン吉は俺が見といてやるから。」

「そんな…。」

「明日休みだし。」

え？横尾さんがここにいるの？
緊張して寝られないんだけど。

てゆーか、お風呂とかどうするの？

「食べろよ。冷めるぞ。」

「はい。ごめんなさい。」

お皿がぜんぜんないってマグカップに入れてくれたお味噌汁。ジャガイモと油揚げがはいってて、暖まる。

冷蔵庫にジャガイモが山ほどあったので
もう一品は肉じゃが。

あんなに短い時間でどうしたらこんなにおいしくなるんだろう…。

「食べながら泣くなよ。」

「おいしいです…。」