じゅういちわ ページ11
Aは濡らしたタオルを鬱の腕にあて、血を落としていく。血で見えなかったが鬱の手は痛々しいほどに抉れていて、鬱はその痛ましさに自分でも引いてしまった。
(痛くはない。けど、視界的に痛いわ…。)
清潔になった状態でガーゼを貼り、包帯を丁寧に巻いていく。
その作業中、二人は終始無言だった。
気まずくはない。寧ろ心地よいくらいの沈黙。
鬱は手当てが終わるまで大人しく待っていた。そして、終わったと同時に鬱は
ut「あ、その…ありがと、な。」
と一言礼を言う。Aはその言葉を聞くと、少しだけ微笑んだ気がした。
それにつられて鬱も笑う。
幸せだった。こんなにも幸せな時間があっただろうか。好きな人と二人っきりで一緒にいる。Aの視線が、自分に向いている。それがとても嬉しかった。鬱はこの時間を噛みしめるようにじっとをA見つめる。
Aは視線を感じ取ったのか、鬱のほうを見て首を傾げた。
鬱はAの瞳に見惚れていたのだが、ふと我に返ると慌てて目をそらした。
Aは相変わらず無表情だ。何を考えているかわからない。けど、鬱に対して嫌な感情を抱いていないことは確かだ。もし嫌な気持ちがあったらわざわざこんなことしないで、医務室に連れてくだろう。腕を自分で切ったなんて鬱は誰にも知られなくなかった。きっと気遣ってくれたのだ。
鬱がぼけーっとしている間、Aはくしゃくしゃになった鬱の髪を整えたり、寝癖を取ったりする。鬱はされるがままで身を任せていた。
「よし…終わりました。」
一通り整え終わったのか、鬱から離れる。鬱はそれを名残惜しそうに見ていたが、すぐに笑顔を作ると、Aはそんな鬱の頭を撫でた。
鬱の心臓は跳ね上がる。顔に熱が集まるのを感じた。
(え、え！？なっなんや急に！！？急には良くないやろまだ心の準備出来てないて！！)
鬱は急に心臓に悪いことをするAに文句を抱く。しかし、嬉しいことに変わりはなかった。鬱は思わず口元が緩むのを感じる。
「……言いにくかったら言わなくても構いません。だけど、もし辛くなったら僕のこと頼ってください。」
鬱は恥ずかしそうにしながらも、撫でられる感触を楽しんでいた。
Aは鬱のそんな様子を確認すると、もう彼は大丈夫だろうと思ったのか、用事を思い出したのか無理しないでくださいねと言い部屋から出ていった。
鬱は再び一人になるが、先程とは比べ物にならないほど寂しくなかった。
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るそーる(プロフ) - ぱすたさん» ぱすた様、コメントありがとうございます。お褒めの言葉をもらえて大変恐縮です。男主攻め、頑張って増やします。それがきっかけでどんどん増えたらハッピーですね☺️ (2023年1月23日 6時) (
レス) id: c31ef83bb0 (このIDを非表示/違反報告)
ぱすた(プロフ) - 完結おめでとうございます……！ 一言では表せないような、重たくどろどろとした感情が言葉の節々から感じられて、すっかり引き込まれてしまう素敵なお話でした。素晴らしい作品に出会えてとても嬉しいです。 次回作も期待しております……！ (男主攻め増えれ…！) (2023年1月22日 23時) (レス) @page13 id: a2c0f6944d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るそーる | 作成日時：2023年1月17日 19時
