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赤side
小瀧に引きずられて向かった場所には誰もいなくて。謎に思っていると俺から手を離した望が怒り顔でこちらを向いた。
「淳太と濱ちゃん帰った言うとるんやけど!?」
俺は少し小瀧の言葉を頭で咀嚼した。
「…え、あ、…そうなん」
そうして出た言葉は曖昧な覇気のないものだった。
残念なようなほっとしたようなそんな感情が俺の中で渦巻く。
「なんでやねん!」
そんな俺を気にする素振りもなく未だに怒っている小瀧。
「小瀧、今日はもうええよ」
「なんで!」
行き先のない怒りを俺にぶつけてくる。俺は苦笑いしながら小瀧の方を叩いた。
「今会ったって淳太は多分心の整理ついとらんやろ。俺やってついとらんから」
そこまで言うと小瀧は段々と大人しくなる。
「やけど…早めに週刊誌のことは否定せな…」
正直小瀧が何故そこまでして淳太にだけ早めに週刊誌のことを否定させようとしているのかが分からなかった。確かに嘘のことを書かれているので否定した方がいいのは事実だけれど。
「別に他のメンバーに話す時でええと思うんやけど」
俺がそう言うと小瀧の顔がまた強ばった。
「あかんの!」
「はあ?」
意味がわからない。
「はよ、淳太に告白しろや!何いつまでうじうじしとんねん!」
「急になんやね…ん…」
声は大きくなる一方なのにその声が潤んでいる気がするのは多分気の所為なんかじゃない。
「なんでっ、」
「こた…き…?」
「もう、しげなんか知らん!」
そう叫ぶと小瀧は走って駅に向かって行った。
俺は小瀧を止めるために伸ばして宙を切った虚しい手を下ろしてしゃがみ込んだ。
なんやこれ。
「…逃げられてばっかやんけ」
今日の俺は思っているよりもずっと最低なのかもしれない。
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作者名:年長さん | 作成日時:2023年3月25日 1時