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赤side
小瀧と他愛もない会話をしていると濱ちゃんを引っ張ってきた淳太が目の前に来た。
「どうしたん?」
「謝りたいことがあってん」
「なに?」
濱ちゃんと淳太が手を握っていることに嫉妬している俺の代わりに小瀧がそう質問をすると淳太は俯いて言った。
「この前逃げてもうてごめん」
この前…。俺が思考を巡らしている間も淳太はどんどん進んでいく。
「のんちゃんとの約束破ってまで逃げてもうた。その後こっち来てくれる言うてくれたんにそんときも逃げた」
「淳太…」
「ほんまにごめんなさい」
その言葉でようやく理解したのと同時に浮かんできたのは。
「…あん時なんで逃げたん?」
そんな失礼な質問だった。自分が逃げた本人に逃げた理由を言うなんて俺でも無理だ。だけど気になってしまった。何をそんなに淳太のことを追いやってしまったのか。
「責めたくなかってん」
思いもよらなかった返答で身体が固まる。
「あのまま会ってたら責めてしまいそうやった」
「そんなん…責めてもよかったんやで」
俺がそう伝えると淳太は頭を横に振った。
「嘘か本当かもわからん情報を鵜呑みにして責めるとかあかん」
「そっ…か…」
淳太らしい理由で納得してしまう。
「やから、ほんまにごめんなさい」
申し訳なさそうに謝る。淳太は悪くないのに。でもそんなことを言っても納得してくれないのだろう。
「ええよ、俺のためやったんやろ?」
そう許すと淳太は濱ちゃんの手を強く握ってから苦しそうに吐き出した。
「…ちゃうよ…。俺のためや…」
「え?」
どういう意味?という疑問は直後にやってきた残りのメンバーによってかき消された。
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作者名:年長さん | 作成日時:2023年3月25日 1時