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桃side
この日のことを思い出したのか、事実ではないと項垂れるしげを見て俺は心底安心していた。
「ていうか、これがあったから逃げられたん?これだけで?確かに大事な時期に撮られたんはあかんけど」
そしてブツブツと独り言を零しているしげを横目にスマホを閉じようした時一件のメールが届いた。
「あ…」
思わず声に出してしまったのは許して欲しい。送り主はつい先程話題になっていた淳太だったのだから。
「どうしたん?」
俺の声に反応してそう聞いてくるしげに俺は「なんでもない」と答えてメールを開いた。
そこには謝罪の一文と今は濱ちゃんと一緒にいるといった類の内容だった。
「…しげ」
「なに?」
「この後暇やったらご飯食べに行かん?」
そう言うとしげは不思議そうな顔をする。
「ええけど、淳太とご飯行く予定やなかったん?」
俺は淳太に返信しながらその問いに答えた。
「おん。せやから淳太もおるけど」
「…は?」
素っ頓狂な声を上げるしげに淳太とのメール画面を見せる。
「まあ、今更無理なんて言わせへんけど」
「しげと一緒にそっちに向かうから」という一文を淳太に送り付けているのがしげの目に映し出される。それを見たしげはとうとう声も出せない程に驚いてしまった。
「ほら、固まっとらんで行くで」
「おま、なん、…は?」
逃げ腰になってるしげの腕を引っ張る。
「仲直りをはよ出来るんが2人の良さやろ?」
だから早く仲直りして。また俺が入る隙もないほどに仲良くして。
先程しげを抱きしめてしまった俺はもうそろそろ限界だから。はやく。
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作者名:年長さん | 作成日時:2023年3月25日 1時