十八話 ページ21
その夜。
私の携帯に、着信があった。
『もしもし。』
【Aさん!!】
『はいぃ!』
電話に出るなり大声で名前を呼ばれたもんだから、つい善い返事をしてしまった。
いっちゃんからだ。
電話越しのいっちゃんの声は、息切れしている。靴音も聞こえるし、何処かを走っているようだ。
【カルマトランジット、分かりますか!?】
『え、あぁ、うん!』
【その残党が雇った極外の傭兵の拠点とか、分かりますか!?】
『えっ? 一寸待ってね!』
寝床につこうとしていた体を起こし、急いで仕事部屋へと向かう。
『えーっと………これだ、三番通りの港近くの倉庫!』
【有難う御座います! 報酬は後払いで!】
それだけ云うと、電話は切れた。
…………五万かな。
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翌日。
龍くんが目を覚ましたという報告がきた。
早速、龍くんの好きな無花果がたっぷりあしらわれたタルトを持って、お見舞いに行く。
『やっほー、龍くん! ご機嫌如何?』
いきなり部屋に入ってきた私を見て、龍くんは顔を顰める。
その横にはいっちゃんもいた。
何処と無く、晴れ晴れとした顔だ。
調子戻ったかな?
「貴様が来た所為で悪くなった。」
『何それ、酷い! 折角好い物持ってきたのになー。』
「?」
私はレジ袋をガサガサと漁って、例のタルトを取り出した。
『じゃーん!』
「こっ、これは……」
『いる? いらない?』
にまーっと笑って尋ねると、龍くんは暫し迷ったあとに、「……いる」とぶっきらぼうに云った。
いっちゃんと顔を見合わせる。
途端に、ぷっと吹き出してしまった。
「何を笑っている、貴様! 樋口、貴様もだ!」
「す、すいません先輩!」
そこで私は、思い出した様に手を叩いた。
此処へ来たのは、龍くんのお見舞い目的だけでは無い。
『いっちゃん、報酬の件何だけど……』
「あっ、そうでした。幾らですか?」
『うーん、そうだねぇ……ざっと五万って所。』
いっちゃんは財布の中身を確認し、天井を仰いだ。
だが、私はどんな相手であろうと報酬はきちんと貰っておくタイプなのだ。
「…………情報屋。僕も支払おう。」
「えっ!?」
「今回の件の責任は全て僕に有る。」
然し!と云ういっちゃんの肩に手を置き、私は笑った。
『しょうがないから、三万にまけとくよ!』
残りの二万は兄ちゃんから集ろう。
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桃茶(プロフ) - 詞音さん» ありがとうございます!夜中の3時…!?ちゃんと睡眠も取ってくださいね!w (2018年4月9日 7時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
詞音 - 面白かったです!ついつい夜中の3時後まで読んでしまいましたw 他のも見ときます! お疲れ様でした。(´∀`) (2018年4月9日 3時) (レス) id: 6b5092fe94 (このIDを非表示/違反報告)
桃茶(プロフ) - 御免なさい、三十二話とあとがきが何故か消されていて……形的にはこれで終わりです!閲覧ありがとうございました! (2018年4月3日 13時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
悠爽 - 終わるんですか!?とても良い作品だったのに!でも作者さんお疲れ様でした。とても素敵な作品で面白かったです!!! (2018年4月3日 13時) (レス) id: e139e0903a (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - え・・・終わっちゃうの!?・・・・・おもしろかったです!! (2018年4月3日 12時) (レス) id: da69d52ea0 (このIDを非表示/違反報告)
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