十一話 ページ13
『兄ちゃんなんて、大っ嫌い!』
──────中原中也が、此の世で最も恐れている事。
太宰に殺される事でも、任務の失敗でも無い。
それは、最愛の妹であるAに嫌われる事である。
只今絶賛嫌われ中の中也は、ぶつぶつと呟きながら長い廊下を歩いていた。
前方から、立原がやって来る。
「あ、どうもッス、中也さ……ん?」
中也の様子がおかしい事に気付いた立原は、言葉を途中で切った。
直ぐ側まで来ている立原には気付いていないのか、中也は其の儘進もうとしていた。
「ちょちょちょ一寸、中也さん? 俺の事見えてます?」
中也の肩をトントンと叩くと、漸く此方に目を向けた。
「あァ、悪い立原。ぼーっとしてた。」
「ぼーっとしてたレベルじゃないッスよ………何かあったンですか?」
「否…………世界の終わりが近付いているだけだ。」
「…………え?」
じゃあな、と手を振りまた歩き出す中也。
直ぐに廊下の壁にゴチンと打ち当たる。
其の際に床に舞い落ちた帽子には目もくれず、中也はまたふらふらと歩き出した。
「…………ありゃやべぇな。」
溜息をついて、立原は帽子を届ける為に中也の後を追った。
事の発端は、朝の事だった。
(今日は仕事も無いし、家でゆっくりしようかな………そうだ、この間探偵社の皆に貰ったケーキが有るんだっけ。高級スイーツ店の。)
そう思いながらAは冷蔵庫を開けた。
だが、そこにあった筈のケーキの姿は、何処にも無かった。
(…………ん?)
顔を真っ青にしたAは、玄関で出かける準備をしていた中也に詰め寄った。
『兄ちゃん、冷蔵庫に有ったケーキ、食べた?』
「…………あァ、あれか。若しかして、食べちゃまずかったか?」
「今日、帰りにケーキ買ってくるからよ」と頭を下げる中也に、Aは内心イラついた。
何せ、あれは「超」がつくほど高級なお店のケーキだったのだ。
それなのに、親切な探偵社の皆が私に、「何時も有難う」と云って買ってくれたものを………
『巫山戯ないでよ! あれはたん………友達から貰ったの! しかも超絶高いの! 其れを勝手に食べるなんて、最低だよ! 兄ちゃんなんて…………』
─────────大っ嫌い!
中也に、雷が落ちた。
物理的では無く比喩なのだが、中也には本当に雷が落ちたように感じた。
それが、今の中也を作り上げた出来事である。
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桃茶(プロフ) - 詞音さん» ありがとうございます!夜中の3時…!?ちゃんと睡眠も取ってくださいね!w (2018年4月9日 7時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
詞音 - 面白かったです!ついつい夜中の3時後まで読んでしまいましたw 他のも見ときます! お疲れ様でした。(´∀`) (2018年4月9日 3時) (レス) id: 6b5092fe94 (このIDを非表示/違反報告)
桃茶(プロフ) - 御免なさい、三十二話とあとがきが何故か消されていて……形的にはこれで終わりです!閲覧ありがとうございました! (2018年4月3日 13時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
悠爽 - 終わるんですか!?とても良い作品だったのに!でも作者さんお疲れ様でした。とても素敵な作品で面白かったです!!! (2018年4月3日 13時) (レス) id: e139e0903a (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - え・・・終わっちゃうの!?・・・・・おもしろかったです!! (2018年4月3日 12時) (レス) id: da69d52ea0 (このIDを非表示/違反報告)
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