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俺は野間さんにそう言うと、田中さんが理不尽にも程ってのがあるしな、と笑いながら言ってた。そんな事言いながら、田中さん助けてくれないじゃないですか。俺はそう思っていると、コーチから井戸崎、ネクスト行け!、と言われて、俺は野間さんから逃れて急いでヘルメットとバッティンググローブ、プロテクターをつけて、バットを持ってネクストサークルに向かった。目の端で野間さんが口を尖らせて拗ねているのを捉えて、バットにスプレーをかけた。少しだけ素振りをして、俺はバットを立ててしゃがみ込んで目を閉じる。この動きは俺の打席前のルーティーンだ。神経を極限まで集中させて、全力で取り組むために毎回している。皆にはお前らしい、て言われてたっけ。そんな事を考えて、俺はゆっくりと目を開けた。前の打者の下水流さんがレフトフライで帰って来た。出番がまわって来たから行くか。俺は一つ深呼吸をして打席に向かった。バッターボックスに立って、構える。相手ピッチャーは九里さんだ、ストレートが早いからなぁ。初球から行くべきか、一度見送るか。・・・いや、決めた。後でコーチに怒られてでもいいからしよう。
俺はボールを投げだされた時、もらった!、と思ってバットを振った。俺の耳には青空を突き破るような快音と周りからの控えめな歓声が聞こえた。打球は綺麗な弧を描いて、レフトスタンドに入った。いや〜、自分で言うのもなんだけど、いい感じに振り切れたなぁ。俺はベースを回って、ホームベースを踏んだ。ベンチに戻ってると、田中さんや野間さん達が笑顔で手荒い歓迎をしてくれた。嬉しいけど、頭を叩かれ過ぎてちょっと痛い。すると、ベンチの奥からベテランが俺の所にやって来た。俺は少しだけ体を強張らせた。何故なら、俺が担当しているポジションは今目の前にいるベテランと同じキャッチャーだからだ。そのベテランは、俺の事を笑顔で迎えてくれた。
?「ナイスホームラン、A」
『ありがとうございます、石原さん』
石「初球から行くとは思わなかった。さすが若いだけある」
『そんな、ただここで行かないとダメだと思って・・・!』
石「それでもいいさ、次も頑張れよ」
そう言って、石原さんはヘルメット越しに俺の頭を軽く叩いた。やっぱり最後は叩くんだなぁ。俺はベンチに腰を掛けてプロテクターを外した。さて、そろそろ攻撃が終わるな。俺はグローブを持ってレフトの守備位置に向かった。
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にゃあ - 続きが気になります。更新頑張ってください。 (2019年12月1日 14時) (レス) id: 6c1a3f5f49 (このIDを非表示/違反報告)
ベル@憂鬱(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!すぐに直させてもらいます (2018年10月29日 16時) (レス) id: 2e250b02bd (このIDを非表示/違反報告)
裕也 - 坂本さんとタナキクマルは同世代ではなかったと思います。坂本さんの方が1つ上です。 (2018年10月29日 12時) (レス) id: a69be8dfc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベル@憂鬱 x他2人 | 作成日時:2018年6月25日 15時