漆 涙の理由 ページ8
「で、どうして泣いてんでさァ?」
「来た時に持ってた鞄、失くしちゃったんです。その中に大切なものが入ってて…」
沖田さんは被っていた、濡れた上着をベンチにかける。私を、追いかけて来てくれたんだ…
なんて優しい人。
「必ず、見つけるよ」
心臓が…うるさい
彼らしくない、普通の喋り方。
まっすぐ前を向いてそう言ったんだ。
そして彼はあろうことか、土砂降りの中を走っていこうとする
私はとっさに彼の腕を掴んだ。
「沖田さんがもし風邪でも引いたら私、土方さんに抹殺されます!」
「心配すんな。その前に抹殺してやらァ」
「とにかく駄目です!!」
「さっき、お前ィ俺が駄目って言っても聞かなかったよなァ?」
「あ…いやぁ、そんなことは…」
「じゃあ何で泣いてたのか教えろィ」
「私、人を不幸にしか出来ない……らしくてせめて、人様に迷惑をかけないようにしてるんですがとにかく、今のは鞄を失くしたパニックで…いやぁ恥ずかしい…」
何話してるんだろう。憧れの沖田先輩には、他にもっと話したいこといっぱいあるのに…
「それじゃあ、俺ァ何人の幸せを奪い取って来たんだろうな。人を斬って、人を斬って
その度にどんどん人に嫌われていくんだ」
「…沖田さんは…私とは違います!
沖田さんは誰かがやらなくちゃいけない仕事をしているだけです。
根は…とても優しくて、輝いて見えます。少なくとも私にはそう見えます」
「……まぁ両人とも、ぺいぺいってことでさァ」
「まだまだですね」
ん?どういう意味だ?
沖田さんは、軽く微笑んでそう言った。
人を斬っては嫌われ…か。
私は彼じゃないから、全ては分からない。けど、私には分からない程重いものであることは確かだ。
「………どうかしました?」
こちらをじっと見てくる、沖田先輩
やだ一応乙女なのよ…ときめきそう
「変わった女だなって思いやしてね」
「沖田さんも充分個性的ですよ?」
雨は通り雨だったみたいで、だんだんと弱くなっていく。
沖田さんは伸びをしながらかったりィーと言っているが、それが全て本心でないことが分かったからもう傷付く事なんてない。
青い空は、まるで私の心と比例するかのようだ。
時には泣いているかのようだったり、そしてまた時には喜んでいるかのようだったり。
残念ながら、凡人ではあったけどだからこそ気付けることも必ずあると思う。
夢は掴んだ奴より、夢を追っている奴の方が時に力を発揮するものだって言ってたもんね。
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千の歌を歌う人(プロフ) - コロさん» 有難きお言葉です!!すごく嬉しいです!頑張ります!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
コロ - おもしろいです!!更新忙しいかもしれないけど頑張って下さいね!! (2019年7月29日 22時) (レス) id: 21d6130453 (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - サラダ油さん» ぱっちゃんはですね、主人公が付けたあだ名です!主人公は色んなあだ名を人に付けるもので…見てくれて、物凄く嬉しい限りです!!頑張ります! (2019年7月29日 20時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - 新八は「ぱっちゃん」じゃなくて「ぱっつぁん」と呼ばれてますよ。面白いのでこれからも頑張って下さい! (2019年7月29日 18時) (レス) id: 3eb4c4dfa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くれの | 作成日時:2019年7月24日 22時