参肆 夜の兎 ページ35
「良かった。来てくれたね」
「…本当に知ってるんですか。沖田さんのこと」
サーモンピンクの髪、青い瞳。手にした大きな番傘と透き通るような白い肌は紛れもなく夜兎の証。
目の前で笑って私に話しかけてきたその人は
……春雨第七師団団長、神威。
「そんなに警戒しないでよ。君のことは殺さないよ。まだ…ね！
それじゃあ教えてあげる。全部君のせいなんだよ」
…全部…私のせい……？
言い終えると、神威は片手を挙げた。すると、刀を持った天人と人間達が私の周りを囲う。
「はい、これ使いなよ。どうしたの、怖くなっちゃった？あれ可笑しいな。君は俺達と同じだと思ったんだけど。ううん違うな。君のあの目は、感情すら無かった。…いいの？やられちゃうよ」
弱いとか強いとかじゃない。
…この刀を取ってしまえば、私は私じゃなくなってしまう気がする。
苦しい。…激しい動悸が私を襲う。
もう二度と人を傷付ける為にこの手を、足を、心臓を動かしたくない。
『俺達は一度汚れちまえば、その汚れは落とせねぇ。だがな、お前は違う。
他人を守りたいと願えるお前の汚れは。そんなお前はきっと理解してくれる誰かと出会えるさ』
誰に言われたかはもう覚えていない。
けど、ふとした時に思い出すこの言葉達はこの世に生きる意味を見失った時の私のお守り。
「私はこの刀を取りません。
私には今この刀を取る理由がないから」
「…やっぱり面白いや。君が本性を晒してくれるのが楽しみだよ！…でも……知った方がいい。
隠してるんだろうけど、それはいつかばれる。そして君は独りになるんだ」
神威さんはいつものように笑いもせず、真剣な表情でそう言った。彼は私に背を向けると手を挙げて またね と言い他の人達と共に去っていった。
私の隠しているもの。それは、今の私に分かるようで分からない。ふっと一気に力が抜けた気がする。
屯所近くまで来たが、帰る気になれず近くの公園のベンチに腰を掛けた。まだ10時を回ったところ。
もしかしたら、総悟さんと顔を合わせてしまうかもしれないから。殺されかけるより怖いのは可笑しい自分でもそう思う。
それだけ自分より大切になってしまった。
「ガキが一丁前に夜遊びとは、お巡りさん感心できねェや」
運が悪いのか良いのか。
その声は、一番聞きたいけど聞きたくない声。
会いたいけど一番会いたくなかった人。
きっと向かい合えば泣いてしまう、そう思ったが案外人って泣けないものだなと感じた。
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千の歌を歌う人(プロフ) - コロさん» 有難きお言葉です！！すごく嬉しいです！頑張ります！！ (2019年7月30日 0時) (
レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
コロ - おもしろいです!!更新忙しいかもしれないけど頑張って下さいね!! (2019年7月29日 22時) (レス) id: 21d6130453 (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - サラダ油さん» ぱっちゃんはですね、主人公が付けたあだ名です！主人公は色んなあだ名を人に付けるもので…見てくれて、物凄く嬉しい限りです！！頑張ります！ (2019年7月29日 20時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - 新八は「ぱっちゃん」じゃなくて「ぱっつぁん」と呼ばれてますよ。面白いのでこれからも頑張って下さい！ (2019年7月29日 18時) (レス) id: 3eb4c4dfa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くれの | 作成日時：2019年7月24日 22時
