参伍 すれ違い ページ36
帰ったらどこにも居なかった。
土方この野郎を半殺しにして聞けば、悩みでもあるんじゃねぇかとのこと。居場所までは本当に知らないようだった。
考える間もなく屯所を出たから、まだ隊服のままだ。夜の見廻りの途中だとか何だとか言えるから都合がいいのかもしれない。
柄にもなく動揺してた。何処かで泣いてるんじゃねェかと。
「悩み事でもあるのかィ?元々不細工な面がさらに不細工になってますぜィ」
「……少し頭を冷やしたいなと思いまして」
そう言って俺の方を見ず少し俯いて笑う。
いっそ泣いてくれれば、どさくさ紛れて抱きしめられるのになァなんて考えてしまう。
何もなくてこんな表情するわけない。
「とりあえず話してみなせェ」
「……失恋…したんです…」
「…………」
上手く声を出せなかった。何て言えばいいか分からなかった。自分から聞いたくせに、聞かなきゃ良かったなんて。
「その人、本当に素敵な人で悪口ばっかりだけど根はとても優しくて…諦められないんです。そんなの駄目だなんて分かってるのに……えっ…?」
気付けば、もう抱きしめていた。心ごと攫っていけたらどんなにいいか。
俺ならこいつをこんな表情になんかさせないのに。
しばらくすると少しずつ抱き込んだ身体が、小刻みに震え出すのが分かった。
押し殺したような泣き声と共に。
「…そんな奴より、俺のことを好きになればいい」
消え入るような本当に小さな声で呟いた。わざと聞こえないように。
離れていく体温に離れがたく感じる。そして、笑うこいつ。それは、ずっと変わらない笑顔。
好きだと伝えられるそんな世界をずっと望んでいる
何で、本人に失恋したなんて言ってしまったんだろう…ううん気付いてほしかった。
神様がいるのなら、一つだけ叶えてほしい。
……全てを失ったとしてもどうか記憶だけは奪わないで。大切な人達を優しさを。
もし、目の前が真っ暗になったとしてもその闇に飲み込まれないように。
「夜の見廻り、暇だから付き合え」
「はい。もちろん」
まだ、好きでいさせてください。
ちゃんと好きな人が出来たと伝えてくれるまで。そして、望みが消えるまで。
……あなたが私を拒否するその日まで。
「土方暗殺ツアーの募集してるんでさァ。どうでィ参加しませんかィ?」
「楽しそうですね!参加します」
「段取りは、まず土方の毛根を殺害。次に心理的殺害、その次は…………」
だけど、あっという間に時間は過ぎていく。
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千の歌を歌う人(プロフ) - コロさん» 有難きお言葉です!!すごく嬉しいです!頑張ります!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
コロ - おもしろいです!!更新忙しいかもしれないけど頑張って下さいね!! (2019年7月29日 22時) (レス) id: 21d6130453 (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - サラダ油さん» ぱっちゃんはですね、主人公が付けたあだ名です!主人公は色んなあだ名を人に付けるもので…見てくれて、物凄く嬉しい限りです!!頑張ります! (2019年7月29日 20時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - 新八は「ぱっちゃん」じゃなくて「ぱっつぁん」と呼ばれてますよ。面白いのでこれからも頑張って下さい! (2019年7月29日 18時) (レス) id: 3eb4c4dfa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くれの | 作成日時:2019年7月24日 22時