参玖 きっといつか ページ40
「いえいえ、人間いいところもあれば悪いところもありますよ。知ってます?あの無駄にイケメンな沖田隊長のこと」
「ただの剣の強いイケメン」
「私も最初はそう思ってました。でも見て下さい…至るところに傷跡がありますよね。背負っているものは私達とは比べ物にならないくらいなんです」
「…悪かったな。醜い嫉妬して」
私も最初から憧れていたわけじゃない。性格悪いなとしか思わなかった。
でもだんだんと気付いた。芯が強くて、人に流されない人。ちゃんと守りたいものがあって……自分を蔑ろにしてしまう人。
「…あんなの無視しとけばいいんでィ」
「起きてたんですか」
「俺は、嫌われ者が丁度いいとこでさァ」
「残念でしたね。私がいる限り、一生嫌われ者にはなれませんよ!」
思えば、このベンチは初めて総悟さんとちゃんと話した場所。
偶然にも降り出した雨は次第に強くなる。
もしかしたらあの日だったのかもしれない。私の恋が始まったのは。
「…すごい雨ですね」
「ふふっ、懐かしい。もう、ここへ来て数ヶ月かぁ早いな……あ…」
目の前が明るく光る。
そう、向こうで見た最後の光景。激しい動悸と耳鳴りが私を襲う。
そして一度経験した、あの時と同じ感覚。
「あの…この手は…」
「ガキが怖がってやがるから、仕方なしにやってんでさァ。感謝しろィ」
背中に回った腕。近くなった距離。
苦しい……でも、安心する。
私が、寒さに震えているのに気を遣ってくれたのか肩に掛けられた彼の上着。あったかい……彼の匂いがする…
「…ありがとうございます。あったかいです」
「具合悪いんなら言いなせェ。そしたら、無理矢理連れていったりなんかしねェのに」
「…違いますよ。私が総悟さんと一緒に居たいだけですから」
言ったあとで、自分の言葉に赤くなる。
まずい…総悟さんの顔が黒くなった…
「一緒に居たいだけ…ねェ。そういうの他の男に言うんじゃねェぞ。勘違いされちまうから」
私の頭に手を置いてぐしゃぐしゃに撫でられる。
勘違いしてほしい。
そんなことは思ったとしても言えない。
でも、きっといつか伝えよう。私の思いを。
「寝てやがらァ。…おもしれェ顔してんなほんと」
「総悟さん…好きだぁあ…スゥ……スゥウ」
「え………飛んだ腑抜けでィ俺は。そういうのは男から言うもんでさァ。俺の火をつけたからには逃しやせんぜィ。期待させるのがいけないんでさァ」
その声は彼女にはまだ、届かない。
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千の歌を歌う人(プロフ) - コロさん» 有難きお言葉です!!すごく嬉しいです!頑張ります!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
コロ - おもしろいです!!更新忙しいかもしれないけど頑張って下さいね!! (2019年7月29日 22時) (レス) id: 21d6130453 (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - サラダ油さん» ぱっちゃんはですね、主人公が付けたあだ名です!主人公は色んなあだ名を人に付けるもので…見てくれて、物凄く嬉しい限りです!!頑張ります! (2019年7月29日 20時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - 新八は「ぱっちゃん」じゃなくて「ぱっつぁん」と呼ばれてますよ。面白いのでこれからも頑張って下さい! (2019年7月29日 18時) (レス) id: 3eb4c4dfa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くれの | 作成日時:2019年7月24日 22時