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『 涼しい…』
 
 
 
 
水道場付近はちょうど日陰になっているようで、外にしては涼しい。体育館の熱気に晒されていたせいか余計にそう感じるのかもしれない。
 
 
 
 
 
へろへろと水道場まで歩けば、人影が。
 
 
 
 
前回の合宿では挨拶する程度。
 
黒髪くせっ毛で、前回から面食いセンサーが反応していた人だ。
 
 
 
 
 
なんて挨拶すれば…
 
 
 
なんて考えているうちに、あちらが私に気づいた。
 
 
 
 
 
赤葦「あ、烏野の…」
 
 
 
 
『 ど、ども。お疲れ様です。』
 
 
 
 
もにょもにょっとそう呟いた。
面食いが発動してしまったようだ。初対面だとハキハキ喋れないのだ。
 
うわぁぁあ!!なにしてんの気持ち悪い。はっきり喋ろうよ私!絶対今変な子だと思われたよ。最悪だ
 
 
 
 
脳内パニックを起こしながら、そこら辺をのたうち回りたい衝動に駆られる。
 
 
 
 
赤葦「名前、何ていうの?」
 
 
 
『 ヒッェ…いっ、一ノ瀬です』
 
 
 
赤葦「…下の名前教えて?」
 
 
 
くすり、と一つ笑いをこぼしてもう一度聞かれた。
 
わ、笑った…。この人笑うんだ。
 
 
 
『 …Aです、』
 
 
 
 赤葦「A、」
 
 
 
『 はい、Aです』
 
 
 
 
聞き馴染みのない下の名前をいきなり呼ばれたせいか、顔に熱が集中する。
 
 
 
 
赤葦「顔真っ赤だよ?熱中症?
 
水分はしっかり取って」
 
 
 
 
『 熱中症です!はい、熱中症!!』
 
 
 
はぁ。赤葦さんに照れてしまって顔が赤いんです、だなんて口が裂けても言えない。
 
食い気味に答える私に、赤葦さんはまたくすり、と笑った。
 
 
笑い方上品だし、言動が紳士すぎる…。
 
 
 
本当に男子高校生なのだろうか。
 
 
 

▽→←赤葦京治という男は



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作者名:人畜無害。 | 作成日時:2017年10月20日 20時

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