知り合いなはずがない【梅原裕一郎】

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『ただいまー』

母「お帰りー」

『あれ？帰ってたんだ』


お母さんは今日もまた夜遅くに帰ってくるだろうと思っていた。

公務員って結構残業酷いっぽいね。


母「あー、これから一緒に出かけるから着替えないでいいよ」

『え？でかけんの？』


シャワー浴びようかなーって思ってたのに…まあいいか。

タッチアンドゴーで家を出る。


母「小さい頃よく遊んでたユウくん覚えてる？」

『あー…』


小さい頃仲が良かった一回りくらい歳が上のユウ兄。

正直顔も覚えてないし声も覚えてないし、本名だってなんだったか覚えてない。


唯一覚えてるのはユウ兄って呼んでたのと、頭を撫でる優しい手。


私が今17だからユウ兄は今…27？


一緒に居たのはユウ兄が高校卒業する前までだから…

10年前くらい？


あー、それは覚えてないわー。


『全然覚えてない。あー、なんか居たなー、程度』

母「だよねー。あんた小さかったもんね」

『で？何で急にユウ兄の話？』


ユウ兄って確か高校卒業してしばらくして引っ越したんだよね？


その後私とお母さんも東京に来たけど。


母「なんかね、久し振りに連絡来たなーって思ったら結構近くに住んでるから会いに行きたいかなって」

『誰が会いたいって？』

母「あんた」


へ？


別に会わなくてもいいんだけどなぁ…。


母「まあ行けばわかるって」


今更家に帰るのもダルくて、仕方ないから黙って後ろをついて行った。

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