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第46話 強い憎悪 ページ4

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「マフィアに戻っても処刑される。それに35人殺した私は......生きてることが罪だから」

否定してあげたい。生きてることは罪じゃないよって。僕だって何処ぞで野垂れ死んだ方が世間の為だと孤児院で散々云われてきた。だけど、今でもこうしてのうのうと生きて、精一杯足掻いている。
生きていることは罪なんかじゃない......。そう云ってあげたかったのに、そんな簡単な言葉も掛けてあげられない自分自身が、本当に情なくて仕方なかった。交番に向おうとする小さな背中をそっと見守ることしかできない自分の弱さに嫌気がさす。
鏡花は幼い容姿にして35人殺し。行けば間違いなく死罪だ。だから敦は、自首したところで彼女の罪が軽くかるとは到底思えなかった。

「.........っ」

やっぱり、ちゃんと言葉にしなきゃ伝わらない! そう思い、敦が鏡花に駆け寄ろうとしたその時。

「処刑? 処刑などせぬ、お前は任務を為果せた」

黒刃が敦の胸の真ん中を背後から貫く。異能力......羅生門だ。それが誰からの襲撃を意味しているのか、敦は自分の置かれた状況を瞬時に理解した。

「あ......」

敦の返り血が地面に容赦なく降り注ぐ。とても鮮やかな赤い血液だった。

「お前の任務は"餌"だ。お前には発信機が埋め込んである。居所は筒抜けだ」

帰るぞ。そう云って鏡花の髪をがしっと掴む芥川の手には憎悪がこもっていた。ご機嫌取りではないが、ひと目で彼の機嫌が悪いことを悟った。但しそれは鏡花にではなく、別の誰かに対して強い憎悪の念を抱いていたようで。

『私の新しい部下は、あなたなんかよりよっぽど優秀よ』

――云わせぬ。二度とそのような言葉、貴女の口から発せられぬよう。

『......何故、抵抗しない』

『やりたければご自由にってことで』

『貴女は僕に何をされても構わないと?』

『だからそう云ってるじゃない』

太宰は最初から気が付いていたのだろう。芥川が、決して自分には手を出せないということを。例え好意感情を抱いていたとしても、肉体関係を持つことまではできないと。

第47話 中原中也→←第45話 今だから云えること



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美穂 - 続き気になります。更新頑張ってください!(^^)d (2020年5月13日 1時) (レス) id: f7b3d5ed55 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 文ストだぁぁぁぁ! (2020年4月9日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
水姫 - 凄い面白いです !中也が好きなので楽しみですーーー!!ハマりました (2019年9月16日 22時) (レス) id: c8e9b80948 (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ(プロフ) - ふぅぁぁぁああぁあ!!!!好きだああああああ!何これ最高!!これは芥川さんオチなんですか!?!????!!!!! (2019年1月12日 0時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月24日 2時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パティー | 作成日時:2016年7月22日 12時

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