第8話 異能の者 ページ9
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教えてあげましょうか。――人食い虎の正体を。
「経営が傾いたからって養護施設が児童を追放する? 大昔の農村じゃないんだから。いやそもそも経営が傾いたのなら一人二人追放したところでどうにもならないわ。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋というもの」
「太宰さん何を云って」
わけがわからない、とでも云うように敦君は無意識で月を見上げた。ドクンドクンと彼の心臓が悲鳴を上げる。そして、苦しそうに唸り声を出し始めた。
「あなたが街に来たのが2週間前。虎が街に現れたのも2週間前。あなたが鶴見川べりにいたのが4日前。同じ場所で虎が目撃されたのも4日前」
これを偶然ととるか、とらないかは人の自由だけれど。
「国木田君が云っていたはずよ。『武装探偵社』は異能の力を持つ輩の寄り合いだと」
巷間には知られていないけど、この世には異能の者が少なからず存在する。その力で成功する者もいれば当然、力を制御できずに身を滅ぼす者もいる。
大方、施設の人は虎の正体を知っていながらも敦君には教えなかったのだろう。敦君だけが解っていなかったのだ。
「あなたも『異能の者』よ。現身に飢獣を降ろす月下の能力者」
虎が私に襲いかかる。その動きに容赦はない。彼は相手が誰であろうと殺すつもりで来ているのだろう。私が横に避ければ、虎は勢い余って木材に衝突した。普通の人間ならば致命傷だ。絶対に無傷では済まない。
しかし彼は、自ら負った傷を高速再生した。まるで最初から傷なんて無かったかのように。とても人間業じゃない。
「凄い力。人の首くらい簡単にへし折れるわね」
虎は雄叫びを上げ、更に攻撃を仕掛けてきた。
「おっと」
運悪く、逃げた先は壁。いつの間にか行き止まりに追いやられていたらしい。殆ど無意識にだろうけど、虎の姿でありながらも彼はここまで計算していたのだろうか。
「獣に喰い殺される最期というのも中々悪くはないけど。――あなたじゃ私を殺せない」
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綺羅(プロフ) - 太宰さんは、スカートなのですか? (2017年1月3日 10時) (レス) id: ba54971924 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» いえ、改善点を見つけられたのでこちらこそありがとうございました。 (2016年7月24日 23時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
奈江 - 確認しました。 わざわざ訂正ありがとうございます。お手数おかけしましてすいませんでした (2016年7月24日 23時) (レス) id: c67595ed82 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» 第1話だけ編集してみたのですがどうでしょうか(^^; (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» お時間取らせてしまうかもしれませんが、できる限り改善したいと思います。教えてくださりありがとうございました! (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パティー | 作成日時:2015年11月2日 19時