第33話 元マフィアの女 ページ34
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「探偵社には孰れまた伺います。その時、素直に70億を渡すなら善し、渡さぬなら」
「戦争? 探偵社と? 良いわねぇ、元気で」
あの芥川を相手に太宰は余裕綽々な表情で。
「やってみなさいよ、やれるものなら」
と、いつにも増して冷たく言い放った。其処には普段から染み付いてる太宰のふざけた態度はなく、まるで別人のようであった。
太宰の挑発的な態度にいち早く反応した樋口が、零細探偵社ごときが、と思わず声を漏らす。続けて太宰に対し、ポートマフィアはこの町の暗部そのものだと断言して云った。
「傘下の団体企業は数十を数え、この町の政治・経済の悉くに根を張る! たかだか十数人の探偵社ごとき、3日と待たずに事務所ごと灰と消える! 我々に逆らって生き残った者などいないのだぞ!」
そう云われたAはただ一言、知ってるわよその位、と少し呆れたように溜息をついた。その意味を樋口が知るわけもなく、芥川直々に伝えられる。
「然り。外の誰よりも貴女はそれを悉知している。――元マフィアの太宰さん」
何かを面白がっているような、それでいて凡てに退屈しているような鳶色の瞳が芥川を見詰める。
『自己紹介がまだだったわね。私は太宰。ポートマフィアの太宰Aよ』
そう告げられた4年前のあの時と、太宰は全く以て同じ目をしていた。凡てを見通しているような底のない瞳も、何一つ変わっていない。少なくとも芥川は思った。
『この人たちを殺した理由を訊いたわね? 簡単な事よ、あなたへの手土産と云ったら理解して貰えるかしら。あなたはどうも金子や地位には靡きそうにない、だからこれが契約金よ。あなたをポートマフィアに勧誘したい』
――4年前。貧民街の路上をねぐらとする、親も知らぬ子供たちの1人であった芥川を闇組織ポートマフィアへ勧誘したのは、紛れもない太宰本人だった。
太宰は芥川の元上司であり、同時に生きる意味を与えられると誓った師でもある。横浜で最も畏れられるポートマフィアを生み出したのは、正しく太宰なのだ。
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綺羅(プロフ) - 太宰さんは、スカートなのですか? (2017年1月3日 10時) (レス) id: ba54971924 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» いえ、改善点を見つけられたのでこちらこそありがとうございました。 (2016年7月24日 23時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
奈江 - 確認しました。 わざわざ訂正ありがとうございます。お手数おかけしましてすいませんでした (2016年7月24日 23時) (レス) id: c67595ed82 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» 第1話だけ編集してみたのですがどうでしょうか(^^; (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» お時間取らせてしまうかもしれませんが、できる限り改善したいと思います。教えてくださりありがとうございました! (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パティー | 作成日時:2015年11月2日 19時