第30話 ポートマフィア ページ31
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なのに谷崎は無傷どころか、どこか余裕な表情で自らの異能力を説明し始めた。
「ボクの『細雪』は――雪の降る空間そのものをスクリーンに変える」
「なっ......何処だ!」
突如聞こえてきた谷崎の声。樋口同様、敦もこの瞬間、一体何が起こっているのかと状況が把握しきれていなかった。
「ボクの姿の上に背後の風景を『上書き』した。もうお前にボクは見えない」
しかし、いくら臆病者な敦でも、一つだけわかっていることがある。谷崎が......彼がまだここにいるということを。
「姿は見えずとも、弾は中る筈っ!」
しかし樋口が何度引き金を引こうとも、谷崎の身体に銃弾が貫通することはなかった。
「大外れ」
いつの間にか樋口の背後へと回っていた谷崎は、隙をついて彼女の首を惨たらしく絞め上げた。樋口によって重傷を負わされた血だらけの妹の姿を思い出すと、掴んでいた両手に、余計力が入り込んでゆく。
「ッ!?」
「死んで終えーー!」
彼の憎しみの声が露になる。
苦しそうに踠く樋口、そして谷崎の背後から、はたまた別の影が近づいて来ていた。谷崎は妹の敵討ちに無我夢中で、気づくのに一歩遅れてしまった。
次に瞬きをした時には、時すでに遅し。黒い刃のようなものによって、谷崎は地面に叩きつけられていた。
「死を惧れよ、殺しを惧れよ、死を望む者、等しく死に望まるるが故に」
それは本当に、一瞬の出来事だった。
突如現れた男の黒外套が、まるで意思を持った独自の生命のようにゆらゆらと揺れている。
「お初にお目にかかる。僕は芥川。そこな小娘と同じく卑しきポートマフィアの狗」
――写真に写っていた、あの男だ。
逃げなければ殺される。本能的にそう思った。
『こいつには遭うな、遭ったら逃げろ。俺でも奴と戦うのは御免だ』
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綺羅(プロフ) - 太宰さんは、スカートなのですか? (2017年1月3日 10時) (レス) id: ba54971924 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» いえ、改善点を見つけられたのでこちらこそありがとうございました。 (2016年7月24日 23時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
奈江 - 確認しました。 わざわざ訂正ありがとうございます。お手数おかけしましてすいませんでした (2016年7月24日 23時) (レス) id: c67595ed82 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» 第1話だけ編集してみたのですがどうでしょうか(^^; (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» お時間取らせてしまうかもしれませんが、できる限り改善したいと思います。教えてくださりありがとうございました! (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パティー | 作成日時:2015年11月2日 19時