第28話 樋口の目的 ページ29
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誰かが尋ねれば万事解決なのだが、世の中そう上手くはいかない。
「止めなッてナオミ、こんな処で」
「あら口応え? 生意気な口はどのくちかしら」
途端、敦は言葉を失った。おまけに顔を赤くして、今この瞬間だけ空気と一体化してしまったのではないかというくらい、2人の戯れ合いを、今一度静かに見詰めていた。
「着きました」
一気に空気が張り詰められた矢先。
「……おかしい」
それが谷崎の、最初の言葉だった。
幾らビルヂングの裏手とは云えども、連れてこられた場所は谷崎の想像を遥かに上回る、とてつもなく鬼魅の悪い処であった。だから谷崎は何かがおかしいと、咄嗟に声を漏らしてしまったのだ。それも依頼人の前で。
「本当に此処なンですか? ええと」
「樋口です」
思えば依頼人の名前もまともに聞かされていなかった。明らかに不自然だ。
「樋口さん、無法者と云うのは臆病な連中で、大抵取引場所に逃げ道を用意しておくモノです」
でも此処はホラ、捕り方があっちから来たら逃げ場がない、と来た道を指して谷崎が指摘すれば、樋口が一瞬だけ、見たこともない薄笑みを浮かべた。
「その通りです。失礼とは存じますが、嵌めさせて頂きました。私の目的は貴方がたです」
彼女が云うには、どうやらそういうことらしい。
樋口はスーツのポケットから携帯を取り出し、電話をかける。数コール目で相手と繋がった。
「――芥川先輩? 予定通り捕らえました。これより処分します」
「芥川……だって?」
その名前に、谷崎は思わず目を見張った。
詰まりは、樋口もポート・マフィアの一隅。自社のビルヂングの裏手に善からぬ輩が屯しているというのも、軍警に掛け合うために証拠を掴んでほしいと依頼を持ち掛けてきたのも、全てが偽装だったわけだ。
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綺羅(プロフ) - 太宰さんは、スカートなのですか? (2017年1月3日 10時) (レス) id: ba54971924 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» いえ、改善点を見つけられたのでこちらこそありがとうございました。 (2016年7月24日 23時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
奈江 - 確認しました。 わざわざ訂正ありがとうございます。お手数おかけしましてすいませんでした (2016年7月24日 23時) (レス) id: c67595ed82 (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» 第1話だけ編集してみたのですがどうでしょうか(^^; (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
パティー(プロフ) - 奈江さん» お時間取らせてしまうかもしれませんが、できる限り改善したいと思います。教えてくださりありがとうございました! (2016年7月24日 22時) (レス) id: 67fd284f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パティー | 作成日時:2015年11月2日 19時