【リボーン】信じた者を守るため 2 (ページ1)

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プロローグページ1

月光は独りの男を照らし、背後に深い闇を形作った
最上階のバルコニーからは年期の入ったイタリア家屋やその先の波打つ黒い海が一望出来る

「…私は何を間違えてしまったのだ」

質の良い毛皮のコートに身を包み近代では珍しい葉巻に火をつけた
冷たい夜風が煙を散らすと眼下の景色が銀色のヴェールに包まれる

特に何を考えるでもなく、ぼんやりと夜景を眺めていたが急に目の色を変えると宙に向かって必死で手を伸ばし始めた

「ラヴィーナ…!!」

彼はその銀色に染まった景色に、愛しい女性の姿を見た

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彼女は絶世の美女と呼べるほどの美貌の持ち主だった
柔和な笑みを浮かべて白銀の髪を揺らしながら歩みよってくる
その腕には、赤子がしっかりと抱かれていた

自分もまた微笑み、幸福のあまり周りに目に見えぬ花が咲き誇っている

暫くしてもやの中から、笑顔で姉弟が歩んで来る
幼い彼らは笑顔の絶えない子達だったと、今更ながらに思い出した

その姿を見れたことで心の奥がじん…と温かくなるのを感じた
けれど、それすらも罪のようで一時の幸福など薄れてしまう

自分に抱きつこうと伸ばされた手を取ろうとしたが、後少しのところで届かなかった

「…っ」

引き止めようとした手は力なく下りて行く
今の自分に、彼らを引き裂いた自分に、その手をとる資格は無いのだから

まばたきの一瞬で彼らは成長し、少年少女となっていた

それは自分の知らない姿

まだ少し幼さが残るが、端整な顔立ちをしている弟
女の子から一人前の女性になり、ラヴィーナの面影を色濃く残す姉

先程同様、彼らは手をさし出した
しかし、そこに温かい笑顔はない

二人の手は自分の首にかかり力任せに締め上げる

苦しい…

つらい……！

肉体的苦痛を感じているのは自分の方なのに、まるでそんな彼らの悲鳴が聞こえるような気がして

その証拠にどこよりも、心臓のある胸の内側がひどく痛んだ

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「…旦那様、また悪い夢を見られたのですか？」

「……フェデルタか」

冷えきった体に側近が持ってきたアルコールを流しこむ
好みの銘柄だが、普段より渋みが強い気がした

「亡くなられたお嬢様の夢ですか？それとも…」

「…お前はまだAが死んだと思っているのか」

険のある声色に臆する事なく彼は答える

「否、私は既成事実を示したまでにございます」

満点の星空や煌々とした街並み
その美しさが、憎らしく思えてならなかった