【d!】また夢の中で【ci】 (ページ11)

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朝も昼も夜も来ない世界に、1人佇む少女が居た。
彼女は羊を撫でながら、空を眺めている。羊たちはそんな彼女を見ながら小さな声で鳴いている。
まるで慰めているかのように手に擦り寄り、鳴いている。

星が降っている。珍しく頻繁に起こった流星群に彼女は驚いた顔をした、珍しいこともあるんだと。

彼は無事に帰れただろうか。

この世界に来るのは、生死をさまよっている者だけだ。それも、とある一定の確率で、メアリーを決める審判の為に。

私が迷子をエミリーと呼ぶのは、なるべく自分の名前を忘れやすくするため。
しかし忘れる者は滅多に居ない、忘れかけても思い出す者も居る、名前とは大切なものだから。

｢……チーノ｣

うん、いい響きだ。きっともう二度と会えないであろう彼の名前を呟く。返事は当然無く、声は空気に溶けていった。
初めて人に好きと、一緒に居たいと言って貰えた。それだけでこの門番の役目も頑張れそうだ。

自分にそう言い聞かせて彼女は今日もメアリーとして迷子を待つのだ、11匹の羊たちと共に。

少女はまだ羊を撫でながら空を見上げている。

本当はほんの少しでも彼が私のことを覚えていて、またここに来てくれたらいいのにという思いは胸の奥の奥に押し込んだ。