壁の破壊 ページ41
桐姫「済まないね、A。私は仕事があるから、そろそろ行かないと。早めに切り上げて帰ってくるから、それまで待ってておくれ」
襖を開けながら、堕姫さんが言った。
完全に口調は桐姫だ。他の人に聞かれてもいいように気遣ってのことだろう。
”堕姫さん”の口調も好きだが、”桐姫”のときの口調も悪くない。
A『大丈夫ですよ!いってらっしゃい』
桐姫「後でね」
桐姫が行ってしまってから、私は部屋で大きく伸びをした。
他のところを見て回ってもいいが、他の人たちの仕事の邪魔になるのは御免だ。
それに暇な時間は嫌いじゃない。
私は一人この場所で堕姫さんの帰りを待つことにした。
どれくらい時間が経っただろうか。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。私は体を起こして、それからはっとした。
何かがこちらへ向かってくる。
恐ろしいほどの速さで、突っ込んでくる。
それも、何か悪いものが。
逃げなければ。
咄嗟に判断し、私は部屋の外に飛び出した。
それとほぼ同時に、物凄い音がして部屋の壁が粉々になった。雷鳴のような音が響き渡る。
割れた壁から、誰かが入ってきた。
「狩りに出たのか、仕事なのか」
小声で呟くのが聞こえ、私は唾を飲み込んだ。
声からして、入ってきたのは男性。そして、鬼のことを知っているのだから鬼狩りのようだ。
そして、一撃で壁を壊すほどの攻撃の威力・・・ひょっとすると柱なのだろうか?
早く、堕姫さんに知らせないと。
走り出した私の足は、
「待て」
という短い言葉で動かなくなった。
見つかってしまった。
背後で刀が空気を斬る音。
硬直した体がやっとのことで動き出し、私は後方に一回転しながら飛んだ。
髪の毛に刃先が掠ったのだろう、髪が数本落ちた。
即座に体制を立て直し、戦闘態勢に入る。
きっと殺り合えば歯が立たないだろうが、避けるだけならばなんとかなりそうだ。それに、堕姫さんが来るまでの時間稼ぎにもなる。
ようやく、入ってきた鬼狩りの顔が見えた。
毛先が黄色の白髪で、高身長で細身の男性だ。かなり綺麗な顔つきをしている。
この細い体からあそこまでの斬撃を繰り出せるとは思えない。
「まさか、お前ではあるまいな」
彼が、低い声で言った。きっと堕姫さんのことを言っているのだろう。
だが、私だってここで馬鹿正直に答えるほど愚かではない。
A『何が』
私の声は、怖いほど冷静だった。
108人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» そうなんですね!なんだか堕姫ちゃんらしい・・・ (2022年12月29日 16時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - たまき@元夕和さん» 一度匂い試してみた事あったんですけど、可愛い様な色っぽい様なそんな感じの匂いでしたよ。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» はじめまして!いつもありがとうございます。そうですね、人間時代はできませんでしたからね・・・。めっちゃわかりますそれ!! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - 零さん» わかりました、ありがとうございます! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読ませて頂いてます!私個人としては千花ちゃんも鬼になって姉妹仲良く暮らして欲しいなと思ってます。後堕姫ちゃんといえばイメージ香水あるんですよ〜。 (2022年12月28日 19時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ