【06】 ページ7
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翔「……A？」
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ふわふわ。夏風に揺れるクリーム色のカーテン。
パイプ椅子に座って、机に突っ伏してスヤスヤと寝息を立てているAの寝顔はあどけなく
昔、保育園で一緒にお昼寝をした、あの顔の面影が残ってる。
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書類をテーブルに置いて、落書きばっかりのホワイトボードに目を向けると
『堀口先生と買い出しいってきます！』と殴り書き。
なるほど、今日は長丁場になりそうだから他のみんなは近くのコンビニでお菓子やらなんやらを買い出しに行ったわけだ。
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そして留守番のAは一人だから、寝ちゃったのか。
俺を待ってたのかな。
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翔「……A」
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甘すぎる。自分の声が、甘すぎて泣きそうだ。
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ガタ、とAの隣のパイプ椅子を引いて腰を下ろす。
いっち、にー！いっち、にー！とテニス部の外周の声。カキーン、というボールを打つ音。
ふわふわ、揺蕩うカーテン。
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さらり、とその風に揺れた長い茶色い髪。
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翔「…いつになったら、俺は」
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そっ…と起こさないように髪の毛を少しだけ掴んで、くるくると自分の指先に巻きつける。
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なあ。俺、頑張ったよ。頑張ってるよ。
ずっとAのことだけ見て頑張ってきた。なんでだろうね、A以外の女の子、目に入らないんだよ。
どれだけ可愛く告白されても、Aが頭をチラつくんだ。
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『しょーちゃんいじめるな！』
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あの時見た背中は大きかったのに、今、君の背中は折れそうなぐらい細い。
こんなに可愛くなって。俺をどうしたいの。
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一緒に帰りたい。一緒に学校に行きたい。
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翔「…………すきだ」
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こんなに触れ合えるぐらい、そばにいるのに。1ミリの隙もないのに。
ないのに…………遠い。遠いよ、遠すぎる。
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ぽつり、と呟いた言葉は多分、ホームランの音で掻き消された。
意気地無し。眠ってる時にはすきだ、って言えんのに。
好きだ、って言えばいい話なのに。意気地無し。泣き虫翔なんかじゃない、意気地無し翔だ。
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翔「…………いっしょにかえりてぇよ」
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ぼそ、と呟いた瞬間。
がらがらっ！と背後から扉が開く音がした。
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