【01】 ページ40
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ふと、自分の人生を振り返ってみる。
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俺の人生の半分を語るには、まず春日Aという女の子が欠かせない。
彼女は俺の行きつけの居酒屋の娘で、本当にちっちゃい頃から知ってる。
そして彼女は俺の、高校の教え子でもあった。
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彼女を守らなきゃという使命感はいつからか、後戻りが出来ないほどの。
胸が焦がれてしまうほどの恋情へと変わっていた。
ずっと彼女の隣は俺だと。彼女は俺の隣で笑ってくれるんだと。ーーーー…そう、想っていた。
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でも。
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和也『教師のクセに何生徒に手ぇ出してんだよ』
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突然変異の、生意気野郎が俺の人生に現れた。
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彼の名前は二宮和也。Aのクラスメイトで、同じく俺の教え子だった。
彼は驚くスピードで、Aの気持ちをかっさらっていった。
俺が積み上げてきた数年間をいとも簡単に抜いて、俺がどんな気持ちで苦しんでいたか御構い無しで。
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Aへの止められない、抑えが効かなくなった恋心。どうにかして彼女が欲しい。
二宮と大人気ない賭けもした。でも、全敗だった。
結局、神様は彼女の隣は二宮がふさわしいという決断を下した。
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忘れたかった。忘れたくなかった。忘れられなかった。
「普通の教師と生徒に戻ろう」と準備室で彼女に告げた後、胸が千切れるんじゃねえかって割と本気でそう想った。
心臓って、もしかして苦しすぎると破けるんじゃないか。って。
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でも、どんなに苦しくても悲しくても胸を焦がしても
心臓は千切れないし、破けなかった。
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大抵のことは「時間が解決してくれる」。
それはどうやらーーーー…多少なりとも、嘘ではないらしく。
Aと二宮が大学生になって、就職して。どんどん月日を重ねて幸せそうな微笑みを浮かべるたび。
その二人を見るたび。
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ああ、俺はあの時。間違っていなかったのだと安堵した。
もう俺の前で泣かないでくれよ、と。
そう思ってAの違う意味で、隣にいることになった。
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俺の恋心が静かに箱に片付けられそうだった時
『パティスリーAugust』という店に運命的に吸い込まれるように入り
そこで、葉月に出会った。
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【02】→←第五夜 『ペリドット・マリアージュ with Hello Say Hello』
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