【11】 ページ38
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だから一昨日の夜、電気がついてなかったのか。
熱にあてられた頭の隅っこで、ぼんやりとそんなことを考える。
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「…別れちゃって、よかったんですか……？」
和也「ん？」
「…」
和也「もうそこに愛情はないのに、引き止めるのは違うでしょ」
「…」
和也「それに。前からもう俺好きな人いるし」
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パチリ。
目と目があって、全身の熱が上がる。
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今までとは違う。今までの目の合い方とは次元が違う。
まるでなにか獲物を狙うような、雄の瞳。
欲が混ざっている、ヘーゼルナッツの瞳に捕らわれて背筋に鳥肌が立つ。
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和也「大体ねぇ、あなた。こうむやみに男を部屋にあげちゃ駄目。俺が悪い人だったらどうすんの？」
「二宮さんは優しいもん」
和也「あなたを食べようとして優しいふりしてるだけかもしれないよ」
「二宮さんになら食べられてもいいもん」
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きゅ、と二宮さんの服の裾を掴む。
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ドキドキ、バカみたいにうるさい心臓。
ああ、この鼓動。きっと気づかれてる。この静かすぎる部屋に鳴り響いて、バレている。
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ぎゅっ、と閉じた瞳。
あのさ。
そんな言葉で恐る恐る、瞳を薄く開ける。
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また、目と目が合った。
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和也「…これ、あげる」
「…え？」
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気まぐれにポケットから出して、ほい、と渡されたのは不器用ながらも手作り感満載の
四つ葉のクローバーが押し花にされてる、しおり。
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和也「俺、結構嫉妬する方」
「…え。」
和也「前の好きな男からもらったもんなんて持ってて欲しくねぇの」
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準備室で作ったんだから、って。
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和也「…四つ葉のクローバーの花言葉、知ってる？」
「…幸運、とかじゃないんですか？」
和也「それも正解。だけど」
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ーーーー…あぁ、間違えた。
この人はお薬なんかじゃない。
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和也「“私のものになってください”」
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和也「……返事は？」
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私の胸を焦がす、熱の原因だ。
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『クローバー』fin.
第五夜 『ペリドット・マリアージュ with Hello Say Hello』→←【10】
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