【05】 ページ32
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私は風邪をひいていたんだ。少し臭い言い方をすれば、恋の病ってやつにかかってたんだ。
ずっと治らなかった。
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「四葉は幸運ですもんね」
和也「五つ葉は？」
「え…わかんないです」
和也「俺めっちゃ好き。五つ葉」
「えー…なんですか？」
和也「財運」
「……」
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この人は薬だ。
私にとって、苦いものを甘くしてくれるお薬。
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「六つ葉」
和也「名誉」
「へえ！名誉は好きじゃないんですか？」
和也「名誉より金」
「……」
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二宮さんと話をすればするほど、逢瀬をするほどあの苦さは甘さに変わってくれる。
タバコの匂いが、染み着き始めた。
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「よく知ってるんですね」
和也「一応生物やってるし？」
「あ、そっか。なるほど…」
和也「よくクローバー集めなんかしたわ。ガキん頃」
「やりました。でもあんまり見つからないんですよねぇ…」
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それで結局三つ葉を押し花にして、しおりにしたんです。
そこは四つ葉にしとけばいいのに。
これ、ずっと好きだった幼馴染が作ってくれたんです。だからなんとなく捨てれなくて。
へえ…、付き合ってんの？
いや、撃沈しました。今は友達と付き合ってます。
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セブンスター。
プレミアムビール。
左利き。
グレーの瞳。
キュ、と上がる口角。
いじわるな笑顔。
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ーーーー…ナコ『好きな人できた？』
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好きな人、なのだろうか。
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それともこれは、いわゆるただの懐くっていう感情なのか。
まだわからない。
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「ふふーん、ふふふーん」
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ある日の夜。少し早めに終わったバイト。
イヤホンで音楽を聴きながら、近くのコンビニで「今日も頑張った！」ご褒美にチョコレートを買って。
ぶらーん、ぶらーんと袋をぶら下げて家路を辿る。
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あの人は、好きな人じゃない。
私のお薬。
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和也「待てよ！」
*「もう離してって言ってるじゃない！」
和也「帰らせるわけねぇだろ、そんなんで！」
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マンションの前。
見たことない、二宮さんの男の顔と
綺麗な綺麗な…お姉さん、がいた。
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