再会、そして動き出す 3 (ページ14)

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85 Sho side ＊9/28 ページ14

その場に立ち尽くして何分経ったんだろう。

夏前の夜には半袖はまだ肌寒くて、すーっと吹いた風に思わず体を震わせた。

“私は、もう翔のこと好きじゃない”

“私、彼氏できたんだ”

Aの反応は俺の予想してたのとは真逆だった。

驚きながらも、嬉しいって言ってくれると思ってた。

でもそんなのは俺のただの願望に過ぎなかったんだ。

俺は遅かったのか…？

やっと気づいたのにもう手遅れなのか…？

『なんでだよ…っ』

“恋愛は理屈じゃないんだよ、翔くん”

6月15日。

遥香と約束した2年記念日。

あの日の遥香の言葉が、脳裏に浮かんだ。

.

朝からお出掛け日和で、俺は初の江ノ島にわくわくしていた。

遥香の家の最寄駅で待ち合わせして、電車に乗って江ノ島へ。

電車の中は混雑していて、俺たちはドア付近に立っていた。

遥香は窓の外をぼーっと見つめてて。

「具合悪い？」って聞いたら「ううんっ全然！大丈夫だよ！」って笑って答えた。

その笑顔が少し無理してるように見えたけど、ただの思い違いだろうってそこまで気にしてなかった。

江ノ電に乗り換えてしばらくした時。

遥香「翔くん！見て！海！」

スマホで新江ノ島水族館までの行き方を調べてた俺の耳に、遥香の興奮した声が飛び込んできて。

パッと顔を上げると、目の前に海がどーんと広がっていた。

『すっげぇ！めっちゃ近い』

遥香「ね、海行きたい！次降りようよ」

『そだな、降りよう』

海辺へ行くと、まだ夏前ってこともあって人はまばらで。

たまに吹く風が気持ちよかった。

遥香「今年も翔くんと海に来れて嬉しい」

『なに言ってんの笑まだ夏はこれからじゃん』

変なことを言うから笑ったら、遥香は困ったように「そうだね」とだけ返した。