#3 一等星のカノジョ【ars.K.N】 (ページ7)

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53.目撃 - N - ページ7

「だってじゃないよ。俺たち別れてんだから」
『うん。分かってるもん…だけどっ』

ハルの泣きそうな声を耳に入れながら、ふとベランダの外に目をやった

何やらマンションの下に人影が見える
よく目を凝らして見るとAと相葉さんだった

ふーーーん

今日も一緒に飯行ってたワケだ
楽しそうに立ち話なんかしちゃって……

早くそいつ帰せよな

「ハル？泣き声なんて聞かされても困るんだけど」
『うぅー…ごめ…ん、、』

あ、そろそろ解散かな

何だよ…

まるで付き合いたてのカップルみたいに手なんか振っちゃ……………「あ？」

思わず開いた口から
煙草が真っ逆さまに落ちて行く

ハルの声も、風の音も耳に入ってこない

俺の神経はマンションの下で抱き合う二人に集中していた

いや、

正確に言うと相葉さんがアイツを抱き締めている
この距離からでも分かるくらい、力強く

だけど肝心のアイツの表情までは分からなかった
ただ、抵抗する様子はない

『カズくん…？』

もしかして……そういう事？

確かに俺は相葉さんを推したけど、いくら何でも早過ぎじゃ…………

『ねぇ、カズくんってば！』
「……」

ハルの困った声に俺の耳はやっと反応を見せた

そして、改めてハルに言わなきゃいけない事を
俺は抱き合う二人を眺めながら言った

「ハル、もう電話掛けてくるな」
『え………』
「今後は一切出ない。連絡先も消してくれていい」
『や、やだ…それは絶対…いや…！』
「もう切るから。じゃあ」
『待って！カズくっ……』

ブツっと、痛い音が向こうで鳴ったと思う

また泣いてんだろうな
ただでさえハルを傷つけてるのに俺は………

いや、でも

こうするしか俺だって………前に進めない。

「…いつまで抱き合ってんだよ」

足元でまだ息をしていた煙草を踏みつけ、俺は部屋に戻った