30.体感、５秒 ページ4
トクン＿。
胸が鳴る。
ゆっくりと近づいてくるカズの唇に。
だけどこの雰囲気、この間の誕生日の夜と同じ。
気がする。
「カ、カズ…？」
「スマホ置いてきた？また邪魔されたら困る」
「ちょ…ちょっと待ってこれって…」
やっぱりこの間の夜と同じ。
私をまたからかってる………！？
「じょ、冗談ならもう離してっ…」
「なら離せない」
「え…？」
「冗談じゃないから」
その言葉にふと目の前が揺らめいて、身動きが取れなくなった…２秒後。
「何してんの？」
パチン！と視界をクリアにさせてくれたのは大野さんの声だった。
その瞬間に私はカズから身体を離して、わざとらしく咳払い。
「アレ、なんかお邪魔だった？」
面白そうな表情で私たち二人の顔を交互に見る大野さん。それに対してカズは至って冷静に返す。
「全然。何？どうしたの」
「相葉ちゃんがさ〜"ニノーニノー！"ってうるさいの。何とかして」
「はぁ…介抱しろってか。わかったよ」
カズは溜息と一緒にバルコニーから部屋に戻り、
気怠そうに相葉さんの所へと向かった。
大野さんもあとを追うのかと思いきや、
浴衣の胸元から煙草一本取り出し、火をつけた。
「ふーん……そういう仲なの？あんたら」
プカプカと煙を上げながら
一番触れてほしくない事を聞いてくる大野さん。
けど絶対見られてるしあれはもうキスする距離だったし今さら何を言っても誤魔化す事なんてもう
「Aちゃんこっち見て」
「はい？」
………ふわっと、煙草の匂いを強く感じた。
と同時に大野さんの唇が私の唇に押し当てられている事に気が付く。
体感、５秒。
唇が離れると大野さんは目を細めて笑った。
「だめだよ、カズは渡さない」
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作者名：ミト
| 作成日時：2019年11月4日 11時
