薬研藤四郎の夫婦刀 (ページ3)

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二話ページ3

薬研side

鶴丸の旦那じゃあないが、驚いた。まさか鈴蘭に会えるだなんて。

大将に顕現されてしばらくして刀剣女士なるものが居ないことに気づいた。

夫婦刀の片割れが必ずしも女だと決まってはいないが、俺の片割れー・・・鈴蘭景清はなんとなく女なんだろう。と人の身を得てから思っていた。

前の主、信長公が死した時に俺もあいつも壊れちまったもんで、兄弟や信長公のとこにいた長谷部たちと会えても鈴蘭には会えないのかと思うともの寂しい気持ちになっては人の姿を得たのだと実感する。

そう思っていたのに、目の前にはいるじゃねぇか。

想像していた通り、いやそれ以上に別嬪な刀剣女士として。

あまりに感情が昂ぶって思わず抱き着いちまったが、さて。ここからどうするか。

俺が大将に夫婦刀ってことを伝えよう思ったが鈴蘭が言っちまったしな。

「えっ⁉じゃあ、薬研と鈴蘭は夫婦ってこと？」

「いや、違うぞ？」

そうだ。と答えようとしたのを遮ったのは鈴蘭だった。

「は？何言ってんだ鈴蘭」

「だってそうだろう。夫婦刀だから夫婦になるんだったら君の兄である一期一振と三日月宗近も夫婦になるぞ」

大将がその言葉を聞いて吹き出した。いや、まぁ、笑うはわかるが俺からしたら笑い事じゃねえ。

「……つまり俺たちは夫婦刀ではあるが夫婦ではないと？」

「そうなるな。あ、でも勘違いしてくれるなよ。私は薬研のことが好きだからな！」

恥じらいなんて少しもない風に鈴蘭は俺に笑いかけた。

鈴蘭が俺のことを好きだと言ったのに間違いはないだろう。

だが、きっとその中には懸想しているという意味は含まれてない。

俺が鈴蘭に抱いている“好き”とは違うものだ。

「ああ、俺も鈴蘭のことが好きだぜ。」

戦場育ちの俺には雅なことはわからん。だから俺は俺なりに鈴蘭を口説き落としてやろう。

いつか鈴蘭の好きの中に恋情が入るように。

「あー、中断するようで悪いんだけど薬研。鈴蘭に本丸内を案内してもらっていい？みんなへの紹介は昼にするから。」

「わかった。じゃあ、付いて来てくれや」

「すまないな、薬研。よろしく頼む」

大将の言う通り、今は鈴蘭が現状に慣れることが先か。

鍛刀部屋を出る俺の後ろに付いて歩く鈴蘭は雛鳥の様で愛らしかった。