プリムラ 3 (ページ9)

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ベタなシチュエーションも s.t ページ9

佐々木大光

別に二人で行動することはあった。なのに、此奴が「デート」とか言うから余計にドキドキしてちょっと疲れた。でも不思議なことに、疲れたのに幸せとか楽しいとかの気持ちの方が大きい。

隣で歩くこの男は、今日一日中マジで可愛くて、可愛すぎてもう……本当に帰らしたくない。

とかなんとか考えたら目が合った。いつもの様ににこっとすると、また克樹もいつもの様に服の袖をきゅっと掴んで……なんか目を逸らしてくれない。え、なんか俺の顔着いてる？

「克樹？」

あーそんな顔で見つめないで欲しい。
その目吸い込まれそうなんだよなぁ。

「……ない。」
「え？」

「まだ帰りたくない…… っ」

そんな、そんな、そんな
そんな……

「ばかじゃないの」

「だから本当になんでお前はそんなに可愛いの」

デートしてた恋人を帰らしたくないなと思ってたら相手から「まだ帰りたくない」とか言われるのなんてすっげぇベタなシチュエーションじゃん。なのになのにこんなにドキドキするんだ。

克樹とは言うと、また行きみたいに萌え袖(これ重要)で頬に両手を添えながら「はわわ」みたいな謎の言葉にならない声を出したり「可愛い、可愛いんだ……」とか言ってる。え、だからなんでお前はそんなに(以下略)

俺だって帰らしたくないし、なんなら家まで連れ込んでずっとずっと独り占めしていたい。だけど、克樹は明日授業が朝からあるみたいだし無理はさせたくないからとかいっぱい考える。どれがいい選択なのか。

「大光 ……駅着いちゃった」

「あ…」

だからなんでお前は(以下略)

まだどの選択がいいか決まってなくて無言のまま克樹を見る。心配そうに見る克樹は捨てられた猫みたいな顔してて、ああ連れて帰りたい。今すぐにでも抱きしめて俺の腕の中に閉じ込めたい。

ってまた余計なこと考えちゃってる。克樹と付き合ってから余計なことばっか考えちゃう。

「大光」

俺が何も話さないから不安になったのか、ほっそい声をかけられる。

「どうした？」
「うん、あのね……」

「ぎゅ！」

？？？？？え、なに？？？これなに？？？なんで俺今抱きしめられてる？？？

俺の顔一個分下に克樹の顔がある。顔って言うか頭。甘い匂いがして背中の所をきゅって掴まれてる。頭をスリスリして「これで頑張れる、大光じゃあね！」なんて言って呆気なく解放され改札に向かって消えていった。

思わずその場でしゃがみこむ。
だからなんで(以下略)

　