秘匿 ページ8
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あの後、じいちゃんの火葬を済ませる為に火葬場へ向かった。
途中、悠仁は病院にいる先輩に会いに行っていたらしい。
帰ってきた時、片割れはどこかやりきれない顔をしていた。
『…そんな顔すんなら助けなきゃいいのに』
「ん、Aなんか言った?」
『…なんでもない』
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骨しか残っていない親族をゆっくり箱に収めていく。
五条さんと悠仁を話しているのを聞き流しながら、温もりのないソレを詰めた。
やがて詰め終わって、やることもないから手の甲を見つめる。
「A、こっちおいで」
『…?なんすか』
「万が一の時、離れてると守れないでしょ」
話の展開がわからず、首を傾げていると片割れが禍々しい指を口に含んだ。
これが言っていた"宿儺の指"なのか、とかこんなの食べて大丈夫なのかとか言いたいことは沢山あったのに。
突如、己の片割れから溢れ出る重圧に喉がひくつく。
息が出来ない。冷や汗が止まらない。
「まっず、笑えてくるわ」
重圧はなりを潜め片割れは舌を出し嘔吐いていた。
やっとの思いで息を吐き出す。
何も言えず、ただ2人の会話を聞く。
「"覚悟は出来た"ってことでいいのかな?」
「…全然。なんで俺が死刑なんだって思ってるよ、でも呪いは放っとけねぇ」
ほんとに面倒くせぇ遺言だよ、と悪態を着いていた。
ああ、そういえばお前もじいちゃんに言われてたな。
"オマエは大勢に囲まれて死ね"…だっけか。
そうだろう。こんな善性の塊が1人で死ぬなんてあってはならない。
あってはならない、のに。
秘匿死刑、秘匿なんだ、大勢に囲まれて死ねる望みはないと言っても過言ではないだろう。
突如己の死への道が明確になったのに、それでも呪いはほっとけないとコイツは前を向き始めている。
俺はずっと止まったまま。
じいちゃんの遺言だって聞かなかった。
悠仁は救いたい、いや救わなければならない対象なのに。
ああ、ぐるぐるが渦巻いて止まらない。
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てふ(プロフ) - しゃけさん» ありがとうございます。結構尖った作品なので不安でしたが、好きになって貰えてとても嬉しいです! (9月8日 3時) (レス) id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ - こんなにドストライクな作品初めてみました。とても好きです。 (9月7日 23時) (レス) @page24 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
てふ(プロフ) - 柴イヌさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えれるよう頑張ります! (8月21日 12時) (レス) @page21 id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - めっちゃ面白いです!続きが待ち遠しいです。作者様のペースで次回作待ってます! (8月21日 9時) (レス) @page21 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
ちと(プロフ) - へいさん» お返事遅れて申し訳ありません。大変嬉しいお言葉ありがとうございます! (2022年10月21日 1時) (レス) id: 20c14f813d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年8月31日 19時