激情 ページ6
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「おっはよー!よく眠れたかな?」
『まぁまぁっす』
「暗いね〜、もっと元気にいこうよ」
宣言通りに、いや告げられていた時間よりも数分遅れてきたこの人に返事をする。
昨日は結局ほとんど寝れなかった。いつも居るはずの片割れが何処かに行ってしまって心がポッカリ空いた感覚がする。
こっちだよ、なんて連れられて着いたのは怪しげな地下。
至る所に御札がはってあって、そこに椅子が3つほど。
その1つには未だに眠っている、片割れの姿。
黒いTシャツを身にまとい、額には少し血が滲んでいる。
腕には太い縄と御札が身動き出来ないように固定されていた。
いつものアイツとは見違える程、静かだった。
...寝てるから当たり前だけど。
そろそろ起きるね、と横から声が聞こえるのと同時に、片割れの肩がピクリと動き、小さく声を漏らした。
「ん"...?」
「おはよう。今の君はどっちなのかな?」
「...アンタ、確か...」
「五条悟、呪術高専で1年を担任してる」
『あんた、五条悟って名前なんすか...それに、教師?』
「言ってなかったっけ?」
言ってない。言ってないとも。
こんな人が教師ってありえるのか?生徒もやばいのだろうか。
うんうんと唸っていると、漸く状況を把握出来たのか焦点のあってなかった悠仁が声を上げる。
「...A!?なんでここに、それに先輩と伏黒は!?」
「人の心配してる場合じゃないよ、虎杖悠仁」
ジクリ。心臓が嫌な音を立てる。
自分が1番危ない状態なのに、最初にするのは他人の心配。
思えば俺がここにいるのだって、コイツが俺の事を五条さんに言ったからなんだろう。
誰がどう見ても根っからの善人。
「君の、秘匿死刑が決定した」
思考が止まる。今、なんて。
理解させる為に回想へ入ろうとする五条さんを無理矢理止めて、問い詰める。
『どういうことですか、昨日はそんな事...』
「伝えたら、君いてもたっても居られなくなっちゃうでしょ?」
『...でも、悠仁は死んじゃダメだ』
だって。だってこんな善人が、死刑?
世の中にはもっと悪い奴がいるだろうに、それこそ俺とか。
片割れが、死んでしまったら俺には何が残る?
悠仁にはなかった、悪意の塊。
それを煮詰めた俺が生きてていいのか?
耐えきれない激情をまくし立てようとした所で、優しく名前を呼ばれる。
それだけで激情が萎んでしまうのだから、もうどうしようもない。
「A、大丈夫だから」
『...そう』
大丈夫で済んだら、どんだけ良かったことか。
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てふ(プロフ) - しゃけさん» ありがとうございます。結構尖った作品なので不安でしたが、好きになって貰えてとても嬉しいです! (9月8日 3時) (レス) id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ - こんなにドストライクな作品初めてみました。とても好きです。 (9月7日 23時) (レス) @page24 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
てふ(プロフ) - 柴イヌさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えれるよう頑張ります! (8月21日 12時) (レス) @page21 id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - めっちゃ面白いです!続きが待ち遠しいです。作者様のペースで次回作待ってます! (8月21日 9時) (レス) @page21 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
ちと(プロフ) - へいさん» お返事遅れて申し訳ありません。大変嬉しいお言葉ありがとうございます! (2022年10月21日 1時) (レス) id: 20c14f813d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年8月31日 19時