俊秀 ページ35
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『みつからない……』
｢あはは…｣
ミーンミンと蝉が嘲笑うように鳴いている。
術式を知ろうとしてもう半年が過ぎようとしていた。ゲトウサンが居なければ俺は術式を知るのに丁度いい呪霊の発生場所なんぞわかる訳がないし、ゲトウサンもこっちに来る回数は月に四回あればいい方だ。
その度にゲトウサンに連れられて呪霊の相手をしているけれど、術式のじゅの字も見つからない。結局ゲトウサンに気持ち程度教わっている体術に呪力を込めて祓って終わりだ。
｢まあ術式は先天的なものだからね…術式がない術師もいるよ｣
『その人達はどうしてるんすか？いまの俺みたいな感じ？』
｢もいるし、後天的に習得できる呪術もあるにはあるからね。有名どころだとシン・陰流とかだけど、アレ門外不出だからなぁ｣
ウーンと首を捻るゲトウサンを見つめる。実践回数が少ないとはいえ、半年もやってきて成果が得られないのは才能がないのと同義ではないだろうか。
ちなみに術式は四〜六歳頃に自覚する人が多いらしい。その辺りで何か変化はなかったかと聞かれたが、生憎思い当たる節はなかった。
正直、フィジカルはあんまり得意じゃない。人並みには動けるがなんせ規格外な片割れを持つと自信なんて持てるはずがなかった。ゲームでも前線で戦うよりも、後方でチマチマ撃つ方が性にあっていた。
かといって、ゲトウサンの言うシン・陰流とやらも門下生にならなければ習えないらしく、少し気が引けた。そこまでするほど俺は呪術というものに熱を持っていなかった。
｢…どうする？辞めてもいいんだよ？｣
『…いや、やります』
ゲトウサンは気を使って辞めることを提案して、その度に俺は変な意地をはってそれを蹴った。我ながら柄にもないことを言っている自覚はあったけれど、もしこれで俺が呪術に触れることを辞めてしまったらゲトウサンとの縁が切れてしまう気がした。
何もゲトウサンのことは知らない。下の名前も、職業も、過去も。ゲトウ、だって偽名かもしれなかった。
私のことをもし誰かに聞かれても、何も言っちゃいけないよと随分前に告げられた。人のことを猿と呼ぶし、教祖のようなことだってしてるようだった。
雁首揃えていい人と言えるような人ではないとは思う。だからこそ俺はこの人が好きだった。日々片割れと共に過ごして感じさせられる自身の悪性とに親近感が湧いたのかもしれない。
だから俺は浮かれて術師の真似事をして、そうして呪われたのだ。
続く (更新停止中)
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てふ(プロフ) - しゃけさん» ありがとうございます。結構尖った作品なので不安でしたが、好きになって貰えてとても嬉しいです！ (9月8日 3時) (
レス) id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ - こんなにドストライクな作品初めてみました。とても好きです。 (9月7日 23時) (レス) @page24 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
てふ(プロフ) - 柴イヌさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えれるよう頑張ります！ (8月21日 12時) (レス) @page21 id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - めっちゃ面白いです！続きが待ち遠しいです。作者様のペースで次回作待ってます！ (8月21日 9時) (レス) @page21 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
ちと(プロフ) - へいさん» お返事遅れて申し訳ありません。大変嬉しいお言葉ありがとうございます！ (2022年10月21日 1時) (レス) id: 20c14f813d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2022年8月31日 19時
