後悔 ページ4
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『ただいま』
誰もいない家に意味もなくそう零す。
結局、俺は学校へ行かなかった。
それで俺が死んだらと思うと行く気にはどうしてもなれないし、行ったところで俺が何か役に立てるかと言われれば謎である。
そうやって言い訳をして、自身の片割れが帰ってくるのを冷たいこの家で待つ。
そうだ、手持ち無沙汰なこの果物を使ってデザートでも作ろうか。
___遺言ぐらい聞いてあげたら良かったのに。
『…うるさいな』
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悠仁が帰ってこない。
あの後料理を作りサランラップを掛けて皿洗いをしたら色々な疲れが出て、眠ってしまっていた。
死地から帰ってきた片割れを労わろうとでも思っていたのに、人の気配はない。
『…まさかな』
ポツリ、呟く。
あのバカ能天気が帰ってこない筈がないだろう。
運動神経だって常人とは桁違いだし、それに...
『こんな俺とは、大違いだし』
後悔はしてない。
どうせ行った所で何も出来ないのは明らかだし、それで死んでしまったら元も子もないし。
悠仁が命張って助けてる先輩も俺は誰だか知らないし、知ってたとしても命かけて助けたいとは思えないし。
ぐるぐると思考が回る。
こうやって自分が行かなかったことを正当化しようとする所が、本当にアイツと大違い。
でも、仕方ないよな。
アイツと俺は双子で、善性を取られちゃったんだから。
気分も落ちたし、アイツも帰ってこないしもう一度寝ようか。
ふて寝だふて寝、なんて考えてればピンポンと呼び鈴が鳴る。
ちらり、時計を見る。
深夜2時。宅配便にしては遅すぎる。
眠たいし、きっとロクな奴じゃないだろうと無視をすれば、程よい低い声。
「あれ、居ないの?彼から聞いた話と違うなぁ」
...ああ、ほんとにロクな奴じゃなさそう。
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てふ(プロフ) - しゃけさん» ありがとうございます。結構尖った作品なので不安でしたが、好きになって貰えてとても嬉しいです! (9月8日 3時) (レス) id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ - こんなにドストライクな作品初めてみました。とても好きです。 (9月7日 23時) (レス) @page24 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
てふ(プロフ) - 柴イヌさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えれるよう頑張ります! (8月21日 12時) (レス) @page21 id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - めっちゃ面白いです!続きが待ち遠しいです。作者様のペースで次回作待ってます! (8月21日 9時) (レス) @page21 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
ちと(プロフ) - へいさん» お返事遅れて申し訳ありません。大変嬉しいお言葉ありがとうございます! (2022年10月21日 1時) (レス) id: 20c14f813d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年8月31日 19時