将来 ページ14
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最後に出てきた片割れが元気そうに彼に駆け寄り、談笑し始める。それを遠目に眺めた。
東京に着く前に悠仁が軽く彼について教えてくれた。
伏黒恵。俺達の同級生。第一印象は真っ黒。
そして、悠仁が助けた例の青年。
「二人は自己紹介まだでしょ?パパッとやっちゃって!」
『…虎杖Aです』
「…伏黒恵」
「エッッそれだけ!?」
「堅いね〜二人とも」
外野はなんとでも言えると思うが、こっちの境遇を考えて欲しい。
正直、気まずいのだ。多分相手もそう思ってる。
俺にとって伏黒恵は片割れが死刑になった一端でもあり、伏黒恵にとっての俺は宿儺の件によってこの世界に引き込ませてしまった虎杖悠仁の片割れだ。
ニコニコ笑顔ではいよろしく、の方がおかしい。
全く気にしていない、と言えば嘘になるが、かといって彼が全面的に悪い訳ではないのだと思う。というか悠仁の思考がイカれてるだけなのだ。
そもそも、俺はあの場に故意的に行かなかったのだから、その件についてとやかく言える権利はない。
だから別に気にしなくていい、と言いたいのだが、そう言った所で俺達の関係性がそう変わる訳でもない。あってほんの少しだが、お互い言葉一つで態度を変えれるほどお気楽な性格はしてないだろう。
『まぁ、よろしく』
「…あぁ」
だから、今はこのくらいの距離感が丁度いい。
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『五条先生』
明日は四人目の生徒を迎えに行くらしく、あの後すぐ解散になったが、去っていく五条先生の背中に声を掛けた。
どうしても、この人に話しておきたい事があった。
『あの、俺の術式についてなんですけど』
「あぁ、それね。どうかした?」
続きを催促してくる五条先生を見やり、落ち着いて言葉を紡ぐ。
『皆の前では、術式を出したくないんです』
「…ふぅん?どうして?」
『その…実は上手く術式が扱えなくて、周りにも被害が』
「嘘は辞めた方がいいよA。僕の眼は特別だからね」
目隠しを上げた五条先生が俺を見下ろす。
初めてこの人の眼をみた。蒼くて澄んでいて綺麗だった。
きっと特別なのは嘘偽りない事で、この眼で見られたら嘘なんて紙切れと同様なんだと思う。
俺なりに考えてきた嘘の理由もどこかに行ってしまった。
観念して、本当の理由を述べる。
五条先生はおかしそうに思い切り笑って、そして俺の頭をワシャワシャと撫でて頼みを聞いてくれた。
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てふ(プロフ) - しゃけさん» ありがとうございます。結構尖った作品なので不安でしたが、好きになって貰えてとても嬉しいです! (9月8日 3時) (レス) id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ - こんなにドストライクな作品初めてみました。とても好きです。 (9月7日 23時) (レス) @page24 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
てふ(プロフ) - 柴イヌさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えれるよう頑張ります! (8月21日 12時) (レス) @page21 id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - めっちゃ面白いです!続きが待ち遠しいです。作者様のペースで次回作待ってます! (8月21日 9時) (レス) @page21 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
ちと(プロフ) - へいさん» お返事遅れて申し訳ありません。大変嬉しいお言葉ありがとうございます! (2022年10月21日 1時) (レス) id: 20c14f813d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年8月31日 19時