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慧「頭、いったい…」
午前10時過ぎ。
やっとのことで起きてきた伊野尾ちゃんはシャワーから上がったばかりの俺の肩のところにちょこんと顔を乗せる。
昨日のこともあって、心臓が飛び出そうになった。
慧「んん、シャワー貸して…」
涼介「いーよ。入っておいで」
慧「ありがと…」
二日酔いなのか、こめかみを押さえながらだらだらと洗面所の方へ歩く。
………昨日のことは、忘れてしまってるのだろうか。
俺のこと可愛いって言ってくれたことも、
好きって言ってくれたことも。
俺は、数ヶ月前伊野尾ちゃんに告白して……フラれた。
その時に伊野尾ちゃんに俺のことを好きにさせてみせる、なんてかっこつけたことを言った。
……んだけど。
昨日、伊野尾ちゃん………確かに好きだって言ってくれたはず。
酔っ払って変なこと言っちゃっただけ…？
がっくりと肩を落としながらも朝ごはんを作る。
シャワーから出てきた伊野尾ちゃんは、料理してる俺の手元を後ろから覗き込んでくる。
近い。
ひたすらに、距離が近い。
涼介「…伊野尾ちゃ…」
慧「……お腹空いた」
涼介「…はいはい、今作るから」
なんだよ。
ドキドキしてるのは俺だけってか。
ため息をつく俺から離れようとしない伊野尾ちゃん。
きゅっと腰に彼の手が回る。
慧「ねぇ、」
涼介「なっ、なな、なに！？」
バクバクと心臓が音を立てて、今にも飛び出そう。
顔に熱が集まって、目の前がぐるぐると回る。
慧「忘れちゃった…？」
涼介「へ？」
慧「……せっかく、頑張って言ったのに」
涼介「な、なにを…？」
ぎゅっと伊野尾ちゃんの手に力が込められるのが分かった。
慧「……すき、って言ったじゃん…」
沈黙。
そして、
涼介「は、え、……えぇ、うそ？」
慧「嘘じゃないし…」
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作者名：すず | 作成日時：2017年7月13日 20時
