鶯と夜 (ページ1)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:1,939 hit

1 ページ1

鶯(ウグイス)：ウグイスは、スズメ目ウグイス科ウグイス属の1種である。「ホーホケキョ」と大きな声でさえずる。日本三鳴鳥の1つ。

｢･･へえ｣
本は、嫌いだった。いや、嫌いだ
娯楽もない、たった6畳の病室に閉じ込められていなければ、同い年のあの子と、楽しく外を駆け回っていただろうに
｢検査の時間ですよ｣
いくら世界でも珍しい難病を抱えているからって、行動を制限されて、生きる時間を管理されて生きていくのはつらい
｢はい。｣
重い足取りを隠そうともせず、看護師の後について歩く
進行性感覚欠乏症：通称、堕天使病
もと合ったものが失われる姿が、天使の羽を切り落とされた堕天使のようだから、そう呼ばれるようになったそうだ
｢あほらしい｣
そう呟くと、前を歩いていた看護師が微かに体を揺らした
ずっと前から私、上山ゆおの担当をしてくれているこの看護師さんは、私と同い年の弟がいるそうだ
そんなの、関係ない
彼には彼の人生があって、私の人生の中には、彼にはない難病があっただけの話
｢着いたよ、頑張って｣
なにも気にすることなんて、無いのに
｢はい。｣
いつも、彼女は悲しい顔をする。
｢じゃあ、定期検診を始めるよ｣
主治医が、話しかける
温和で、優しい顔をした彼は、東京大学出身らしい
｢いつ、治りますか｣
毎日同じことを聞く
｢、ごめんね。｣
毎日同じ返事を聞く
｢いえ、すみません｣
私が困らせていることは伝わる
私も一度は憧れた、高すぎる壁に絶望した、あの東大に合格したなら、治す方法を見つけてくれるのではないか、そう思って
｢何か、気になる変化はあったかい？｣
｢とくにありません｣
｢、そうか。｣
冷たい言葉になっていることもわかっている
｢じゃあ、また明日｣
｢はい。｣
そうして私の一日は終わる
また、六畳の地球で本を読むだけ

ただ、それだけ