#４ ページ4
「兄貴ー！」
そう言って、子供のように俺に駆け寄るA。
「なんだ、静かにしろ。もうとっくにみんな上で寝てるぞ。」
少しきつく言っても、Aには最近効果が無くなってきた。
打たれ強くなったのか？
「見て！」
そういうAの手のひらの中には、コーヒー豆が3粒
7個も年が違う俺は、まだ12のAを妹のように面倒見てきた
「これで、兄貴の好きなコーヒー作ってあげる！」
Aはまだ純粋だった。
何も知らなかった。
地上の世界もまだ知らなくて、この世界が当たり前だと思っていやがる。
Aは、そのコーヒー豆をたった今外から拾ってきた石で潰し始めた
「どこで手に入れたんだ？」
俺が尋ねると、Aは得意げに話し出した。
「通りを１人で歩いてたらね、コーヒー豆が売ってたの！でも、すっごく高いでしょ。だから、お店の人のお尻めがけて小石をパチンコで打ってやったんだ！」
そう言いながら、俺特製の木と糸で出来た簡単なパチンコを見せた
「そしたら、おばさんが、誰だ今打ったやつわー！ってキョロキョロしてたから、そのうちにコーヒー豆を掴めるだけ掴んでやった！」
「だけど、夢中で走ってたら、3粒しか残ってなかった」
今まで得意げに話していたのに、最後に落ち込んだように言うAに、俺は頭を撫でた
「よくやったな。だが、こんな夜遅くまで１人で出歩くのはもうやめろ。最近さらに物騒になってきやがった。」
「はーい！」
Aは案外俺の言うことを素直に聞くやつだった
いつの間にか、コーヒー豆は大きさは統一されてねえが、小さな粒ぐらいまでにはなっていた
Aは、それをティーカップに入れて、沸かしていたお湯を注いだ
コーヒーだが、お茶のような濃さまでしかいっていない
Aはそのカップを俺に渡した
「誕生日おめでとう！」
俺はすごく驚いた
「覚えていたのか？…ありがとう。」
俺の誕生日のために、わざわざ危険をおかして…
俺はAの前で少し飲んだ。
想像以上のまずさだった
「…悪くねえ。今までで1番美味い。ありがとうな。…ほら、さっさと上にあがって寝てこい」
Aは嬉しそうに おやすみ と言って階段を駆け上がった
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作者名：チチュ | 作成日時：2017年8月9日 22時
