LC 17-6 ページ29
｢ならば、せめてお前の傲慢たらしめるその全てを、ここでお前から消し去ってくれる！！｣
｢俺の魂はこの身体から剥がすことなんて出来ないぞハーデス。｣
｢ﾌﾝｯ…それで良い｣
ハーデスがアローンの身体目掛けて、空にひらめく稲妻のごとく入り込んで通り抜けた。
やはり、魂をさらうことは出来なかったらしい。
俺は少し安堵した。あの閃光じみた特攻に一瞬ヒヤリとしたが、何ともなくアローンの肉体に存在していたから。
＿＿その刹那。
ひやりとして、心臓は電撃を受けたような衝動を感じた。
刺すような
底のない穴に落ちていくような暗くて恐ろしい気持ちになった。
わが身が引きちぎられたような叫び声と共に、何か大切なモノが、かけがえのないモノがパキンッと割れる音がハッキリと聞こえた。
その身が凍る音と同時にハーデスの姿は消えたのだった。
｢＿＿あっ。へ？｣
緊張して張り詰めた糸が事切れるように膝から崩れ落ちる。
胸に手をかざし服を掴むと、しっかりと鼓動が聞こえた。
ﾄﾞｸｯﾄﾞｸｯﾄﾞｸｯ…
心臓が動いていることは、生きている証。俺はまだアローンの肉体にいた。
＿＿でも、足りない。
物足りない。パーツが足りない。大切だったモノが＿＿！
ｶｼｬﾝｯ…
近づく無機質な金属の擦れる音に、これまでにない恐怖を感じた。
感じた？たった金属の音に？
『来るなっ！』
ｶｼｬﾝｯ…ｼｰﾝ
ピタリと音が止み、閉じていた目を開ける。
目は音の正体であるヒュプノスを捉えた。
良かった。
ｶｼｬﾝｯ…
静止したはずのヒュプノスが動き出した。
ゆっくりと俺に向かって来る。スキルを発動させたのに何故止まらない？！
『止まれ』
ｶｼｬﾝｯ…
『止まれ…止まれぇ！ヒュプノス！！』
ｶｼｬﾝｯ！！！
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作者名：ルビ | 作成日時：2022年2月1日 22時
