鶴は幸せを運ぶのか Ⅱ (ページ6)

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「ホンモンだよ……！」

大森サン宅二度目の訪問。

「アッ、写真撮っていいですか！」
「あー、勿論！撮って撮って…！」

髪の生えたカエルとやらは、金色のザリガニ以上に酷かった。どうみたって人工の毛を貼っつけてるだけ。
両生類にそんな毛が生えるわけねぇだろ。

「いやぁ〜驚きましたよぉ！私がぁ偶然川の側を歩いてたらぁ…こいつがキュルキュル鳴いてましてねぇ〜。私も長いこと生きてますが、こぉんなのは初めてです！」

発見談もつい最近聞いたのと同じだ。
めちゃくちゃ帰りたい。

今回も真司に押し付けちゃダメ？

「でもねぇ、あんまり大袈裟に書かないで下さいよ？私、あんまり騒がれるのが好きじゃなぁいもんですから」
「いやぁ、そんなこと言わずに！今回も大々的に取り上げさせて貰いますから！」

かく言う真司は、楽しそうにシャッターを切りまくっている。ジャーナリストらしいことが出来て嬉しいようだ。
楽しそうで何より。それはそうとして帰っちゃダメ？

「いやぁ、シリーズ決定しましたんでね！」

真司が率先していろいろしてくれるので、正直暇。
マァ来たばっかりで帰るというのも流石にアレだし…もう少ししたら真司に押し付けて帰ろう、そうしよう。

『……』

ふと、後ろを向けば。

ゆるゆると立ち上る煙。出処は地面に刺さった線香で、それは何本もつらなっていた。文字が書かれた札のようなものもある。
土が盛り上がっているのを見る限り、墓だろうか。

それと、気になることが、もうひとつ。

『すみません』

場所を移動して大森サンの写真を撮っている最中、私は口を開いた。

『あの煙突、なんですか？』

気になることと言うのは、前回から見えていた煙突。絶えず黒い煙が立ち上り、周りの雲もなんだか色がおかしい。
目の錯覚＿＿いや、目の錯覚であんなに空が虹色に染まるか？

「あっ、あれね！どっかの製薬会社の工場だそうですよ！」
『…ありがとうございます』

考えすぎかもしれないが、何も考えないよりはずっと良い。
少しでも引っかかることがあれば、徹底的に調べるのがジャーナリストの心得だ。

『真司。やることあるから、後任せる』
「もっちろん！任せてよ」
『ン。頼んだ』

まずは情報収集だ。
カエルの取材は真司に託して、新たなスクープを求めて歩き出す。

言っておくが、決してカエルの取材から逃げたワケでは無い。
ジャーナリストとしては、謎を謎のままにはしておけないのだ。

逃げたワケではないのである。
決して。